「ヨガは、インナーマッスルを鍛えられることから女性を中心に人気ですが、最近では心身にさまざまな治療や予防効果をもたらすことが、医学的にも証明されつつあるのです。アメリカ・ハーバード大学の研究チームの調査では、ヨガが心血管疾患の予防に有効という結果が出ています」

 

そう語るのは、自律神経研究の第一人者で順天堂大学教授の小林弘幸先生。3月に入り春の兆しも見え始めた今日このごろ。カラダを動かすのにもってこいの季節だが、ハードな運動はかえってカラダを傷めることもある。そこで、小林先生がオススメするのがヨガ。

 

「何もしない群とヨガをおこなった群とを比較すると、血圧や悪玉コレステロール、中性脂肪やBMIの値など、ドロドロ血流と密接に関わる要因が低下したのに対し、善玉コレステロールの値は上昇するという結果になりました」

 

その改善値はエアロビクスやサイクリング、ランニングなどの有酸素運動をおこなった群とひけをとらないほど。ハードな運動をしなくても、ヨガで心血管疾患を予防できる可能性が示されたのだ。

 

「また、うつ病の改善への期待も高まっています。昨年12月に開かれた日本統合医療学会では、九州大学大学院・心身医学の岡孝和先生が、うつに対するヨガ療法の可能性について報告。ヨガにはストレス反応を抑制する効果があり、過去の調査からも軽度〜中等度のうつに有効であるとみられていることから、とかく薬に頼りがちなうつ病治療の代替療法として、今後期待がもたれているのです」

 

心血管疾患の予防や、うつ病の改善にも期待されるヨガ。

 

「その作用は現段階では明確ではありませんが、深い呼吸を正しくおこなうことで自律神経の働きが回復していることが大きいと、私は考えます。たとえば、不整脈の一種である心房細動は、心臓が小刻みに震えることで血栓ができやすくなり、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクとなっていますが、原因は、まさにストレスなどによる自律神経の乱れ」

 

心臓の筋肉を動かす信号は自律神経が送っているため、疲れや精神的ストレスによって自律神経が乱れると、信号も乱れ、不整脈をおこしやすくなってしまう。

 

「深い呼吸をもたらし、適度にカラダを動かすヨガは、自律神経を整えるのにもってこい。とくに、加齢によって衰えがちな副交感神経の機能を高めてくれるため、血管を広げ、心房細動や血流の滞りを防いでくれるのです。副交感神経の働きが活発になれば、ストレスホルモンの分泌も抑制し、深い呼吸は『幸せホルモン』と呼ばれるオキシトシンの分泌も促進!これがうつ状態の改善につながっているのだと考えられます」

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