「昨年3月に発売した認知症の治療を支援する『ひまわり認知症治療保険』等が、今年4月18日時点で契約件数が19万件に達しました。弊社の保険商品としては異例のヒットです」(太陽生命広報部)
いま幅広い層で、認知症に特化した生命保険のニーズが高まっている。
「昨年4月から『あんしん介護 認知症保険』を販売開始しましたが、今年3月末時点で目標契約数を1万件も上回っています。親の介護を経験した女性が夫に加入を勧めるケースもあるようで、50代を中心に契約数を伸ばしています」(朝日生命経営企画部)
この理由について生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんは、もうすぐ「高齢者の5人に1人が認知症」という時代が来ることに多くの人が気づき始めたからだと分析する。
「’14年の調査発表で厚労省は、日常生活に支障をきたしはじめた状態(日常生活自立度II以上)の65歳以上の認知症患者が、近い将来、大幅に増えることを予測しています。’10年に280万人だったものが、’20年に410万人、’25年には470万人を超えると--。当然、認知症患者の介護は“人手もお金もかかる”とわかっていますから、その心配を解消したいとの思いがヒットにつながったのでしょう」(柏木さん)
先駆的な前出2社の認知症保険について、柏木さんと、ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんに解説してもらった。
「『ひまわり認知症治療保険』は、初めて医師にアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症、パーキンソン病の認知症など『器質性認知症』と診断、場所や時間、人物のいずれかが認識できないと判断され、その状態が180日継続した場合に、一時金300万円が支払われます」(柏木さん)
保険期間は10年か終身を選択。契約年齢は20~85歳と幅広い。また、要介護となるきっかけのひとつでもある骨折、男性の場合は7大疾病やシニア疾病(老人性白内障や熱中症など)、女性の場合はさらに女性特有の病気(子宮筋腫や乳腺症など)までカバーされる。
「手厚い保障と加入条件が緩和される分、保険料の月々の支払いが少し割高だと感じます。保険期間、払込み期間が終身の場合、50歳女性で月々の保険料は7,276円、60歳女性で1万197円です」(柏木さん)
一方の『あんしん介護 認知症保険』は、公的介護保険制度に連動していることが大きな特徴だ。
「まず、居住する市区町村で『要介護1』以上に認定されれば、保険料の支払いは必要なくなります」(風呂内さん)
契約年齢は40~75歳と、開始年齢も公的介護保険と同じ。保険期間は70歳、75歳、80歳満了タイプと、終身タイプがある。
「保険金の受給条件は要介護1以上の認定、器質性認知症の診断、着替えや食事、排泄が上手にできない、徘徊、火の不始末も心配されるような『日常生活自立度III以上』と判断された場合となります」(風呂内さん)
受け取り方は、年金タイプと一時金タイプの2種類から選択する。
「一時金300万円の場合(終身保障で終身払い)、50歳女性で月々の支払いは2,451円、60歳だと4,176円です」(風呂内さん)
加えて生保業界初となる診断書の取得代行や、提携先の施設体験も無料でできる。
「ただし、両保険とも貯蓄型ではないので、健康なままであれば、受け取れる保険金はありません」(風呂内さん)
“明日はわが身”の認知症。大事な家族のために、何かしらの、転ばぬ先のつえを用意しておこう。