「母の認知症がかなり改善したんです。前より表情がだいぶ明るくなり、食後の後片づけや食器洗いも手伝ってくれるようになって……」
安堵した声で語るのは、俳優の布施博さん(59)。母(84)が2年ほど前にアルツハイマー型認知症と診断され、かなり深刻な症状が見られた。
昼食を食べたことも忘れ、自分の年齢も言えない。介護を担当する布施さんの妻・和子さん(45)の名前もわからない――。昼間はデイサービスに通っているが、自宅に戻った後は一人で過ごすことも。そんな様子が、昨年12月22日の『爆報!THEフライデー』(TBS系)で放送され、話題を呼んだ。
同番組で「認知症の症状が改善する」と紹介されたのが、特別養護老人ホーム「杜の風・上原」(東京都渋谷区、以下「杜の風」)。ここでは、入居者が共通して実践していることがあった。それは、水分を毎日1.5リットル飲むこと!
「寝たきりの状態で入居したのに、水を飲むことで半年後に会話も歩行もできるようになった方に会い、母にも実践してもらうことにしました。デイサービスに行くときにはカルピスの500ミリリットルのペットボトルを2本持たせ、自宅ではお茶をメインに飲ませるようにしました」(布施さん)
毎日、1.5リットルの水分摂取を開始してから約1カ月。布施さんの母は息子の妻の名前を思い出し、普通の会話ができるまでに回復。目にも光が戻ったという。
「1日に水分を1.5リットル取る習慣をつければ、認知症はよくなります」
そう断言するのは、40年以上認知症介護を研究している国際医療福祉大学大学院の竹内孝仁教授。
「人間の細胞は水がないと作られません。胃で消化吸収された食べものは、タンパク質分解酵素によって腸でアミノ酸に分解されます。そしてアミノ酸は血液に乗って各細胞に運ばれます。このタンパク質の分解作業は水がないと成り立たない。人体からは1日に約1.5リットルの水分が尿として出ていくので、その分を補う必要があるわけです。また、体から水分が失われると血液がドロドロになり、意識障害が起こることも。そうなると認知症も悪化するため、水分補給はきわめて重要なのです」(竹内教授)
『水を飲む』。そんな簡単なことで認知症が改善? とはいえ、高齢者に1.5リットルの飲水は厳しすぎるようにも思える。「杜の風」の齋藤貴也施設長に話を聞くと--。
「初めは『そんなに飲めない』『トイレが近くなる』と嫌がる方も多いですよ。でも、無理強いは禁物です。飲み方にはコツがあるんです」(齋藤施設長)
そこで、1.5リットル飲水のコツを教えてもらった。
【1】ペットボトル or 水筒を活用
施設では摂取した水分量をスタッフが記録するが、自宅では、飲むたびにコップに注いでいると総量がわからなくなってしまうことも。ペットボトルや水筒にあらかじめ1.5リットルの水分を用意し、そこからコップに注いで飲むようにするとよい。
【2】起き抜けが“飲水チャンス”
「寝ているうちに体から水分が失われるため、朝は抵抗なく飲むことができます。『目覚めの水ですよ』と多めに注いであげましょう。250ミリリットル程度は飲めるはず」(竹内教授)
【3】好きな飲みものでOK
大切なのは「水分摂取」なので、飲むのは水以外でもいい。お茶や糖分が含まれるジュース類でも構わないので、本人が飲みやすいものを何種類か用意し、体調や気分に合わせて変えてあげよう。
【4】軽い運動を取り入れる
「体を動かすと、自然と水分を欲するようになります。寝たきりの人でも、歩行器を使って少しでも動くことで、水が飲めるように。体操や散歩などのあとに飲めば負担になりません」(竹内教授)
認知症予防のためにも、1.5リットル飲水を今から始めてみてはいかが?