のどの痛みや、発熱……かぜにもさまざまな症状があり、それに合わせた漢方薬もさまざま。でも、まずは自分の「体質」を知ってから、漢方薬を選ぼう!

 

「かぜでつらいときに“とりあえず『葛根湯』を飲もう”と思っている人が多いと思います。しかし葛根湯は、寒気や発熱などの“初期症状”に有効な漢方薬です。あらゆる症状に効く万能薬でも、かぜの総合感冒薬でもありません」

 

そう指摘するのは、テレビの健康番組でもおなじみの池谷敏郎医学博士。約20年前から池谷先生は、不調を訴える患者に対して、漢方薬をよく処方しているという。寒さからかぜをひく人も多いこの季節。そういった患者に対しても、池谷先生は漢方薬を処方している。

 

「かぜの場合、その原因の多くはウイルス感染です。西洋医学の薬は症状を緩和することがあっても、かぜのウイルスをやっつけることはありません。かぜに特効薬はありませんからね。でも、漢方薬は熱を上げて発汗を導き、その人の免疫力を活性化させて、ウイルスと闘う体を応援するのです」(池谷先生・以下同)

 

近年、漢方薬はドラッグストアでも販売され、種類も増えているため、どれを選べばいいかわからないという声も多い。しかし冒頭で池谷先生も警告していたように、「とりあえず葛根湯を……」という選び方はNG。「体質により処方する漢方薬は違う」と、先生はキッパリ語る。

 

「漢方薬の種類によっては、体質により効く人と効かない人がいるんです。東洋医学では、体質を『実証』と『虚証』とに分けます。みなさんは、疲れたらすぐに寝込みますか? 疲れていても頑張り続ける体力がありますか? 体力のある人は、実証。そうでない人は虚証タイプです。クリニックでは、その人の症状とともに、実証・虚証どちらなのかというタイプを考慮し処方しています」

 

まずは自分が「実証」「虚証」のどちらの体質なのかを知ろう。

 

【実証】

エネルギッシュ

声が大きい

疲れにくい

筋肉質

食欲旺盛

 

【虚証】

顔色が悪い

声が小さい

疲れやすい

やせ形

寒がりで低血圧

肌がカサカサ

 

「この体質を踏まえて、かぜの症状ごとに漢方薬を選んでいきます。同じ虚証の人でも、吐き気を訴える場合と、熱が長引いているときに服用する漢方薬はもちろん違います」

 

よく知られている「葛根湯」は、体力がある、つまり「実証タイプ」の人が、かぜをひきはじめたときこそ服用すべきものだそう。かぜの症状が悪化してからは、その症状によって漢方の種類はさらに分かれる。

 

「『実証タイプ』の人が、悪寒、発熱に悩んでいる場合は『麻黄湯』を。これは、インフルエンザの初期に飲んでも効果があります。『虚証タイプ』で、悪寒、頭痛がある人には『麻黄附子細辛湯』が最適な漢方薬です」

 

実証と虚証のどちらにも有効なものもある。

 

「のどの痛みが激しいときに、どちらのタイプにもおすすめなのが『桔梗湯』。漢方薬には珍しく、少し甘味があるのが特徴で、3~4回に分けて、お湯に溶かし、うがいをしながら飲むのが『桔梗湯』を飲むときのコツです。鼻水が出たときには『小青竜湯』を。これはくしゃみ、鼻汁に効き、花粉症や気管支炎の患者にも処方されるものです」

 

気を抜けない治りかけに効果のある漢方薬も。

 

「のどがイガイガしたり、空咳など熱がないときにも漢方薬は用いられています。咳だけ残っているときには、『麦門冬湯』を飲みましょう。実証・虚証どちらの人が飲んでも大丈夫です。『実証タイプ』で、黄色いたんのある激しい咳が残っているなら、ぜんそくにも効く『五虎湯』を処方しています」

 

本来のかぜではないが、“おなかのかぜ”と呼ばれるのがウイルス性胃腸炎だ。

 

「そのときには、胃もたれや消化不良など、現代人の胃腸の不調によく使われる『六君子湯』を。下痢や急性胃腸炎に効く、『五苓散』も覚えておくとよいでしょう」

 

漢方薬は、自分に合ったものを、しっかりと選ぶことが大切なのだ。

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