冬から春への季節の変わり目。体の不調を感じたときは、「薬」の前に「野菜」を試してみませんか? ここでは、近年の研究成果から明らかになった、野菜が持つ薬事効果を紹介。副作用なし、おいしく安全な“新しい処方箋”をお届けします!
「近年、食べ物に含まれる各種成分が人にどのような影響を及ぼすのか、最先端の科学技術を用いた研究が著しく進んでいます。これまでは“民間伝承”と思われてきた野菜が持つ薬事効果がつぎつぎに立証されているんです」
こう話すのは、薬剤師で薬学博士の田村哲彦先生。たとえば刺身のツマとして使われる、しそ。古くから生魚を食す際に殺菌効果があるといわれてきたが、成分のペリルアルデヒドに抗菌・防腐作用があることが実証されたばかりか、せきを鎮める効果も動物実験によって明らかに。
「食べ物に含まれる薬効成分を“機能性成分”と呼びます。今回はその成分が多い野菜に注目。現在、科学実験で効果が実証されているものを紹介」(田村先生・以下同)
■がんの抑制や予防になる野菜
【肺がん】にんじん
成分のβ-カロテンががんを抑制。毎日の摂取で肺がんになる確率が半分になった調査データも。
【大腸がん】かぼちゃ
成分のβ-カロテンと豊富な食物繊維のダブル効果で特に大腸がんの予防に効果がある。
【乳がん】ブロッコリー
成分のスルフォラファンが発がん物質の解毒酵素を活性化。乳がん予防に効果大とされる。
【胃がん】しいたけ
成分のβ-グルカンなどの多糖類が免疫機能を促進。胃がんの抑制効果が認められている。
【がん全般】にんにく
がんの原因となる重金属や放射線による体のダメージを成分の有機ゲルマニウムが緩和。
田村先生は40年前から、こうした食べ物の薬事効果に注目。西洋医学と東洋医学の両方を学び、病気の予防や治療に食べ物をうまく取り入れる健康法「食治」を研究してきた。
「数年前、米国国立衛生研究所が中心となって、どの食べ物のどの成分ががんに効くかという大規模な調査が行われました。その結果、にんにくに含まれるβ-カロテンなどが“効果がある”とお墨付きをもらったんです」
にんにくに含まれる硫化アリルは強い抗菌作用で知られ、食べることで体内の免疫力をアップ。さらに含有成分の有機ゲルマニウムなどが体内の有害な重金属を体の外に出す働きがあるのだという。
「またにんじんなどに含まれるβ-カロテンには変異原性抑制作用があるとわかっています。米国の研究チームが1日1本のにんじんを食べればがん全般の予防効果があると発表しています」