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「やみくもにすべての薬を否定するつもりはありません。当然、緊急時の治療や短期間で痛みや苦痛を取り除くために必要な薬もあります。問題なのは、“長期間にわたって薬を飲み続ける”こと。このように処方されている薬の9割は、実際は必要のないものだと私は考えます」

 

そう語るのは、’12年に日本で初めて「薬やめる科」を開設した松田医院和漢堂院長の松田史彦先生。薬の長期服用・多剤服用が原因で体調不良が生じる、という事例が増えているという。

 

「薬は症状に対して、たしかに作用はします。しかし、その作用を必要とするのは体の細胞の一部。それなのに薬は血液をめぐりながら全身で吸収されていきます。つまり、薬の成分がその働きを必要としない健康な細胞にも作用してしまうのです。長期間にわたってこれを続けていれば、体に異変が現れるのは当然です」(松田先生・以下同)

 

松田先生の「薬やめる科」では、患者さんが減薬・断薬によって体調不良の悩みから解放されている。

 

「何年もせきが止まらないと来院された高齢の女性で、血圧の薬として長期服用していたACE阻害薬(降圧剤)をやめたところ、せきが止まった例があります。ほかにも、足がつると来院された女性がカルシウム拮抗薬(降圧剤)をやめたらけいれんの症状が治まりました」

 

薬の多剤服用は、それだけ体に副作用をおよぼすリスクが高まる。

 

「多剤服用で特に深刻なのが、この20年間で患者数が約2.6倍に増えているうつ病です。抗うつ剤や睡眠薬は依存性が高く、減薬・断薬が非常に難しいので、悪循環に陥りかねないのです。パニック障害と神経症を併発していた40代の女性患者さんは、抗うつ薬をはじめ7種類の薬を常飲していました。代替療法、漢方などを利用して約1年かけて断薬し、健康な日常を取り戻せましたが、カウンセリングなど精神的サポートも不可欠でした」

 

薬の9割はいらないと断言する松田先生だが、残りの1割、薬がどうしても必要とされるケースも当然ある。不用意にやめると禁断症状が出る薬もあれば、薬に精神的に依存している人の場合は、断薬でかえって不安が増して逆効果になることもある。

 

あくまで本人が希望する場合に、徐々に薬を減らすことから始めていくことが大事だという。松田先生が提案する減薬・断薬へのステップは次のとおり。

 

【1】薬について警鐘を鳴らしている本を読んでみる

 

「まずは自分の飲んでいる薬に関心を持ってみましょう」

 

【2】患者の不安、主張を受け止めてくれる医師を探す

 

「薬をやめたいと伝えたとき、投薬治療以外の具体的な提案をしてくれるかどうかが、医師を見極めるうえでの目安となるでしょう」

 

【3】薬の代わりにできることを探す

 

「運動療法や栄養療法のほか“おばあちゃんの知恵袋”的な民間療法も有効なことがあります。自分に合った方法を継続することで、薬をやめても十分元気に暮らせます」

 

現在何らかの薬を服用中という人は、まず自分の飲んでいる薬に関心を持つことから始めてみては。

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