嫌なことやストレスを感じると、出てしまう「ため息」。“幸せが逃げていく”などネガティブにとらえられがちだが、「呼吸法」次第で、心が整い、余裕ができるというーー。
「ため息にはストレスを和らげる効果があります。疲れていたり、思い悩んでいるときほど無意識に出てしまうのは、体がストレスに反応している証拠。おならやゲップと同じで、我慢するとかえって体によくありません」
そう話すのは、呼吸法の講師として、国内だけでなく海外でも活躍する倉橋達哉さん。新刊『仕事に効く! ポジティブため息』(山と渓谷社)では、ネガティブなイメージのため息を、ポジティブに生かすための方法を紹介している。
「ため息をつくとき、下を向いて浅く息を吐いていませんか? 現代では、ため息に限らず、ふだんの呼吸そのものが浅くなっている人が非常に多く見受けられます。呼吸が浅いと、肺に送り込まれる酸素の量が少なくなるので、体は酸素を取り込もうとして心臓を動かし、脈拍が速くなります。脳はこれを危機的状況だと受け取り、身を守るために興奮状態になるのです。これが心に焦りを生み出す原因。ですから、緊張して鼓動が速くなると、人は深呼吸をして心を落ち着かせようとするんです」
倉橋さんは、浅くつきがちなため息を意識的に深い呼吸に変えることで、心が自然と整い、余裕ができるようになると説明する。
「女性はため息をつきやすい人が多いのですが、これはこまめにストレスを解消できるという意味でもあります。どうせため息をつくなら、深い呼吸でより大きくストレスを減らしてみませんか?実践した方からは、細かいことにイライラしなくなった、漠然とした不安がなくなり生きやすくなった、などの声が上がっています。また、ストレス解消のために食べていたお菓子の量が減り、その結果、ダイエットにつながったという声もありますよ」
倉橋さんに、ため息を利用して心を整える方法を教えてもらった。
「ポジティブなため息の基本は、視線を上に向けることと、肺の中の空気をすべて出すつもりで息を吐き切ること。どの呼吸でもこれを意識しましょう」
■木の呼吸
ひと仕事終えた後、体をぐっと伸ばして、ふーっと息を吐く。そんな呼吸をより効果的に行うのが「木の呼吸」。根を張り、ぐんぐん成長するイメージで、体の伸びを意識しながら行おう。
(1)かかとを上げ、つま先立ちになっては戻す動作を3回繰り返す。
(2)両手を胸の前で合わせ、息を「ふーっ」と吐き切りながら頭上に引き上げる。
(3)息をゆっくり吸いながら両手を下ろして、最初の姿勢に戻る。
※(2)〜(3)を繰り返す。目安は3回。
「体にかかる負担は、心にも表れ、ストレスとしてたまっていきます。ストレスがスーッと逃げていくのをイメージしながら、丸まりがちな胸と背中はとくに意識して伸ばしましょう」
■想いを描く呼吸
寝る前の習慣にしたいのが、アスリートが行うイメージトレーニングをアレンジした「想いを描く呼吸」。リラックスした状態で、自分がかなえたい夢をなるべく具体的に想い描いてみよう。
(1)最初に自分のかなえたいことを「ひと言」で言えるようにまとめておく(例:「5年後に家を建てる」「馬主になる!」など)。
目をとじて息を「ふーっ」と吐いて、吐き切る→息を2〜3秒止めて、かなえたい「ひと言」を頭の中で唱える→息が入ってくるのにまかせて鼻で吸う(目安は3回)。
(2)ゆったりと呼吸をしながら、頭の中で夢のかなったあとの状態をイメージする(まわりの様子、声、匂いなど具体的であるほど効果的)。
「夢をかなえる経過や努力ではなく、夢がかなった後の状態をイメージするのがポイント。たとえば『ハワイ旅行に行きたい』なら、海で泳りだり、レストランでおいしいものを食べたりしているところを、その場の空気や匂いなども想像しながら思い描いてみましょう。ご褒美の先取り効果でモチベーションがアップ。夢をかなえた自分をイメージすることで自信がつき、自己肯定感がアップします」