政府が緊急事態宣言の延長を発表したことにより、自宅で過ごす時間の長い日々はまだしばらく続くことに。在宅中はついつい自分を甘やかしてしまうという人も少なくないだろう。しかし、そんな悪習慣が体に及ぼす悪影響について、疲労外来ドクターの工藤孝文先生は警鐘を鳴らす。
「海外では、感染予防のための外出禁止や隔離の長期化により、うつや不安障害などの症状を発症している人が急増しているという報告が次々と出ています。日本も例外ではありません」
工藤先生の元に訪れる患者さんの中にも、不安や不眠症など精神的な不調と関係する症状を訴える人が増えているそうだ。
生活のリズムが変わるだけでなく、家族の不安定な気持ちが伝染して家庭内でピリピリしたムードになったり、外出が減り気分転換がしにくくなっているなど、さまざまな要因が考えられるという。
「こうした状況が、ストレスや不安、睡眠障害などを招きやすくするのですが、これらはすべて脳のコンディションにも深く関係しています」
特に中高年世代では、これらが“脳の老化”にもつながってしまうのだという。そんな“巣ごもり中のNG”が次の習慣だ。
【1】ジャンクフードを食べすぎる
インスタントラーメン、スナック菓子といったジャンクフードは、高カロリーで、塩分、糖分、脂質過多で栄養価は低いということが知られている。
「砂糖、脂肪、食品添加物がたっぷりのジャンクフードには、脳に幸福・満足を感じさせる作用もあり、ついつい大量に食べてしまいがち。しかし、食べすぎが1週間も続くと、学習や記憶、抑うつなど気分の調整に関係している海馬が小さくなるというデータが数多くあります」(工藤先生・以下同)
【2】空腹の時間帯がなくなる
一日中家にいると、ストレスも加わり、小腹がすくとついつまみ食いをしてしまう。
「ダラダラ食べ続けていると、胃腸が常に働かなくてはならず、内臓の疲労が蓄積しやすくなります。だるさや頭痛のほか、脳の働きにも影響が出ます。3食の間隔をきちんと取り、空腹状態を作るようにして臓器を休ませることが大事です」
【3】悪い姿勢でパソコンを操作する
家の中で長時間パソコンやスマートフォンを操作していると、その間ずっと脳が情報を受け取り続けていることに。その結果、思考が止められずに疲労が蓄積してしまう。
「前頭葉での慢性疲労の状態が続くと、判断力、集中力の低下やうつ症状などの弊害を招きやすくなります。さらに、長時間同じ姿勢をとることによって、呼吸が浅くなって脳に十分な酸素が行きわたりません。30分に一度は立ち上がって深呼吸をしましょう」
【4】テレビのニュースを長時間見る
連日、家でテレビをつけっぱなしにしていると、新型コロナウイルスのニュースが際限なく入ってくる。
「どうしても不安をかきたてる情報が耳に入ってきてしまいますが、ネガティブな情報は脳を非常に疲れさせる原因です。受け身で聞いていると、徐々にメンタルにボディブローのように効いてきます。その結果、脳が麻痺して、落ち込みやすくなったり、怒りやすくなるなど、感情の起伏が激しくなることも」
最新のニュースはもちろんチェックしておきたいが、見る番組をある程度決めておくなどして、脳への負担をできるだけ減らそう。
「食事、運動、睡眠など、どの分野にも注意点がありますが、特に注意してほしいのは、情報の洪水にさらされること。在宅中、テレビをつけっぱなしにするのは、避けてください。ニュースではどうしても新型コロナウイルス感染拡大の話題や、それに伴う経済不況のトピックスが中心で、不安につながるものが多く放送されています。そうした情報を過度に受け取っていると脳は興奮状態になります。常に情報を受け続けることは避けて、脳を休息させる時間を持つよう意識してください」
今後、イキイキとした生活を取り戻すためにも、在宅中の生活習慣を見直してみよう。
「女性自身」2020年5月26日号 掲載