「新型コロナウイルスによる健康問題はいろいろ指摘されていますが、中高年以上の層で全体的に共通しているのは、ストレスによる血糖値の上昇傾向です」
こう話すのは工藤内科の副院長で、糖尿病内科医の工藤孝文先生。
「実際、私の患者さんで、コロナ禍でも運動量にも食事にも変化はなかったのに、血糖値が上がったという人が少なくありません。その原因は、連日のコロナウイルスについてのニュースなどによるストレスではないかと考えられます」(工藤先生・以下同)
通常、血糖値が上がる理由は、食事が関係している。血中のブドウ糖の量が多くなってくると、すい臓から分泌されるインスリンが糖を脂肪に変え、体は脂肪細胞をため込むようになる。
ところが、血中の糖が増えすぎると、インスリンの糖分解が追いつかなくなって糖尿病になる。さらに体脂肪が増え続けると、血糖が血管を傷つけて炎症を発生させたり、血管を詰まらせるようになるのだが、多くの場合はその前に、食事や運動、あるいは服薬で血糖をコントロールする。
しかし、ストレスはアドレナリンなど血糖値を上げる作用のあるホルモンを分泌させるため、余計に注意が必要となるのだ。しかも、高血糖は糖尿病だけでなく、新型コロナウイルス感染症の重症化のリスクを高めることもわかっている。
「ですが早めに対策をとれば、改善が可能です。いまの生活習慣に少し足すだけでできることがあります」
それが次の「3分間早歩き」だ。基本の「3分間早歩き」で「メリハリ歩き」を行う。
■基本の3分間早歩き
【1】一歩踏み出す
やや大股で足を踏み出し、かかとから着地する。かかとに少し衝撃が加わる程度に。ひじは90度くらいに曲げ、手は軽く握る。
【2】後ろ足で蹴り出す
前足の足裏を全部地面につけ、体重を移動させながら後ろ足のつま先で蹴り出して前進する。※正しい姿勢で体重移動を意識して、前を向いて歩こう。
【3】逆の足を踏み出す
2で前足に完全に体重移動したら、逆の足を同様に踏み出して、かかとから着地する。
【4】リズミカルに繰り出す
同様に後ろの足で蹴り出す。体重を後ろから前に移動し、左右に揺れないようにすること。
■効果を上げるメリハリ歩き
【基本姿勢】まっすぐに立つ
頭のてっぺんから糸でつるされているように背筋を伸ばして立つのが基本。耳、肩、足の付け根、くるぶしが一直線になるように。
【普通歩き】軽いウオーキング(3分)
自然な歩幅で、自然な呼吸を保って歩く。姿勢、視線などはきちんと意識して。最初は普通に歩いてウオーミングアップ!3分ごとにスピードコントロール。
【早歩き】息が上がる早歩きを(3分)
歩幅を広げ、ひじを90度に構え、腕を大きく振って速度を上げて早歩きをする。すこし息が上がる程度に。※歩幅は身長×0.45〜0.5(160センチの人なら72〜80センチ)
効果的な筋力アップには、次の「効果的な筋力アップウオーキング」のように、視線や姿勢に気をつけて、全身の筋肉を使うことがポイントだ。この歩き方を続けると、体が締まり、ダイエット効果も期待できる。
■効果的な筋力アップウオーキング
・視線は10〜20メートル先を見ると前かがみにならず、安全も確保。
・背筋を鍛えるために、背筋を伸ばし、猫背にならないように。
・ひじを90度に曲げて大きく振ることで、安定してスピードアップが可能に
・意識しておなかをへこませる。大きく息をすると、より腹筋が鍛えられる。
・最も大切なのは太ももの大きな筋肉に負荷をかけること。
・ふくらはぎの筋肉にも力がかかる歩幅でしっかり歩く。
・かかとから着地すると、足がしっかり伸び、衝撃は骨の強化にも。
「筋肉には、瞬発力に必要な速筋と持久力に必要な遅筋があります。歩くのに必要なのは遅筋ですが、『3分間早歩き』をすることで速筋も鍛えることができます。速筋と遅筋を交互に使うことで、代謝バランスのよい体ができるのです。私も『3分間早歩き』を実践して減量に成功し、姿勢がよくなったと言われます」
また、ウオーキングは有酸素運動だが、「3分間早歩き」の間は無酸素運動に近い。
「1日20分程度の有酸素運動が奨励されていますが、有酸素運動に無酸素運動を組み合わせると、20分以下でも十分に筋肉がつくられますし、糖や脂肪の代謝も促進されるようになるのです」
通勤時間や買い物へ行くときなど、普段の生活に「3分間早歩き」を加えるだけでいい。しかもこれなら食べる量を変えなくてもいいので、無理なく長く続けられる。早速実践して、生活の中にメリハリをつけよう!
「女性自身」2020年8月11日 掲載