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医療技術の進歩や生活環境が向上していることで、日本人の平均寿命は延び続けている。厚生労働省が7月末に発表した最新の日本人の平均寿命は男性が81.41歳、女性で87.45歳と過去最高を更新。“人生100年時代”にまた一歩近づいた。

 

「いっぽうで、認知症患者の増加も深刻な問題となっています。20年後には高齢者のじつに4人に1人が認知症、または予備群の軽度認知障害(MCI)になっているという予測もあります。健康寿命を延ばすためにも、認知症の予防がとても重要になってきます」

 

そう語るのは、『医師が認知症予防のためにやっていること。』(日経BP)の著者で、聖路加国際大学臨床教授の遠藤英俊先生だ。遠藤先生は35年にわたって認知症研究に携わり、今年3月に長年勤めた国立長寿医療研究センターを退職、定年後から“チャレンジ”していることがあるという。

 

「それまで忙しく働いていたのが、急に暇になるとガクンと老け込み、将来的に認知症になるリスクが高まってしまいます。私は定年後に仕事のペースを見直して、日曜日から火曜日は休み、水曜日から土曜日まではいくつかの病院で診察をしています。仕事を減らすことでできた時間を活用して、これまでできなかったゴルフなど趣味の時間に充てています。さらに私は『1年以内にゴルフのスコアで100を切る』といったように具体的な目標を設定しています。また、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で休んだ時期もありましたが、料理教室に通い始め、ティラミスやローストビーフが作れるようになったんですよ」(遠藤先生・以下同)

 

認知症のスペシャリストである遠藤先生自身が、趣味などを満喫することを通じて、同時に認知症予防の効果が期待できる習慣を取り入れているという。

 

認知症の中でも約7割と最も多くの患者数を占める「アルツハイマー型認知症」は、脳内アミロイドβと呼ばれるタンパク質がたまり、神経細胞の破壊につながることで起こる。タンパク質の蓄積が始まってから認知症を発症するまで、20〜30年かかるともいわれている。

 

「ただ、アミロイドβが蓄積したとしても、必ず認知症を発症するわけではありません。80代で発症すると仮定した場合、50〜60代のうちからアミロイドβの蓄積を抑えるための生活環境を心がけることで、認知症が発症する前に天寿をまっとうすることが可能になります。近年では、アルツハイマー型認知症のリスクを高める要因のうち、『自分次第で改善できる9つのリスク』がわかってきました。今のご自身の体の状態から重点的に改善すべきポイントを知ったうえで、早めに対策を講じるようにしましょう」

 

その「9つのリスク要因」は次のとおりだ。

 

【認知症リスク要因】

小児期:教育期間が短い(11〜12歳までに終了)

中年期(45〜64歳:高血圧/肥満/難聴(聴力低下)

高年期(65歳〜):喫煙/抑うつ/運動不足/社会的孤立/糖尿病

 

幼少期に教育の期間が終わる人は、今日の日本ではほとんどいないと思われるが、脳の神経細胞は使っていないと衰える性質があるため、シニアになってからも脳トレなど頭を使う習慣を身につけたい。

 

さらに、中年期に「高血圧」や「肥満」といった生活習慣病や「難聴」を放置したままでいると、将来的に認知症になるリスクが高まってしまうという。

 

「血圧が高いと血管の壁が硬くなる動脈硬化が進み、脳梗塞や脳出血を起こしやすくなり、『血管性認知症』にかかりやすくなります。肥満を放っておくと糖尿病になりやすく、認知症のリスクを1.5〜2倍に押し上げるといわれています。また、年をとって耳が遠くなる加齢性難聴の状態で補聴器を使わないままで過ごすと、脳に情報が入りにくくなり、抑うつ状態を招くといわれています。これも認知症のリスクを高めてしまうことになります」

 

高年期にリスク要因である「喫煙」「抑うつ」「運動不足」「社会的孤立」「糖尿病」にも、早いうちから対策を講じておこう。現在はコロナ禍で自宅にひきこもりがちになることから、心と体に不調をきたしている人も増えているので注意したいところだ。

 

「ほかにも、長時間の座りっぱなしは体によくありません。在宅中でもこまめに体を動かすことを心がけ、運動するのならウオーキングなどの有酸素運動で足腰を鍛えましょう。現在は仲間とカラオケやサークル活動などには参加しづらい状況ですが、オンラインでの会話の機会を設けるなどすれば、コミュニケーションが脳の活性化につながります。在宅中でもできることを探して取り組んでみましょう」

 

「女性自身」2020年9月8日 掲載

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