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体調を整えて免疫力を高めることに加えて、ウイルス対策の観点からその重要性が注目されているのが、鼻の中のメンテナンス(鼻メンテ)だ。コロナ禍に追い打ちをかけるようにやってくる花粉の本格シーズンを前に、鼻を健全に保つことが欠かせないという。

 

鼻には“空気清浄機”のような役割があり、その機能を最大限生かすことが身を守ることにもつながると、たなか耳鼻咽喉科の田中伸明院長は話す。

 

「鼻には、外気を調整して肺が呼吸しやすい温度と湿度に整える機能と、異物などを取り除く機能が備わっています。『鼻孔』(鼻の穴)から入った空気は左右の鼻腔を通過して鼻の突き当り、のどの上にあたる『上咽頭』で合流して、のどから肺に向かって流れます。上咽頭はウイルスを含んだ空気がたまりやすい場所で、粘膜下にリンパ球などの組織が発達しています。このリンパ組織の集合体が“扁桃”で、呼吸によって鼻や口から入ってくる異物を捉え、気管や肺への侵入を防ぐ免疫機能を持っています」

 

上咽頭の表面は、細かい毛の生えた「繊毛上皮細胞」に覆われていて、多数のリンパ球が間に入り込んでいる。

 

「健康な状態であれば、ウイルスや細菌が入り込んでも、繊毛上皮細胞がベルトコンベヤーのようにウイルスを胃に流し込み、胃酸で死滅させるので感染にはいたらないことが多いのですが、繊毛上皮細胞は敏感な組織で、乾燥した状態が続き、傷んでしまうと免疫機能が低下します。ウイルスが滞ることで感染リスクが高まるほか、疲労や口呼吸、喫煙などの刺激などでも炎症を引き起こします」

 

上咽頭の粘膜にウイルスや細菌が感染すると、のどの痛みや咳といったかぜの諸症状が起こる。炎症物質が脳に送られるとウイルスと戦うために、「体温を上げるように」という指令が下ることで発熱するといわれている。これが、かぜが発症するメカニズムだ。

 

一方、リンパ球はウイルスや細菌が入ってきたらいつでも戦えるようにふだんから準備を整えている。ウイルスとの戦いが始まり、上咽頭が炎症を起こすと「サイトカイン」などのさまざまな炎症物質を大量に作り出す。

 

「炎症物質は、炎症が生じている部位にとどまらず、一部が血管内に入り込み全身を巡ることで、腕や足などに関節痛や筋肉痛などの痛みを引き起こします。また、免疫系のバランスが乱れてサイトカインが過剰に作られてしまうと、“サイトカインストーム”が起こり、ウイルスだけでなく正常な細胞まで傷つけ、内臓や血管の機能不全を起こしてしまいます」

 

新型コロナウイルスで問題になっているのは、肺炎で亡くなる人が多いことだが、ウイルスが肺に入って暴れるだけでなく、サイトカインストームと呼ばれる免疫機能の異常によっても引き起こされることがわかっている。

 

「以上のことから、鼻のコンディションを整え、その機能を十分に発揮させることはとても重要です。鼻うがいや鼻呼吸など、日ごろの“鼻メンテ”を習慣にし、困難な時期を乗り越えましょう」

 

「女性自身」2021年2月23日号 掲載

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