「在宅時間が長く、運動不足にストレスも加わると、脳の働きは低下してしまいます。起床後も、脳が十分に覚醒しないまま1日を過ごす人が増えているのです」
そう語るのは脳内科医の加藤俊徳先生。
加藤先生は、これまでMRIによる1万人以上の脳を解析したデータから、脳の働きを「番地」に見立てている。
「脳は、場所ごとに8つの異なる機能をつかさどっているのですが、私たちは毎日の習慣で同じ機能ばかりを使いがち。使われない機能は衰え、老化してしまいます」(加藤先生・以下同)
なかでも読者世代にあたる50代の女性が気をつけたいのが、喜怒哀楽を表現し、感情をコントロールする役割を担う「感情脳」の衰えだという。
「50歳は脳の老化が始まる節目。女性の多くは、長年家事や育児に追われて『〇〇しなければ……』と忙しく目の前の習慣をこなしています。すると、夫や子ども、親のことを優先するがために、自分の気持ちを感じ取る機会が減ってしまう。この状態は『脳番地』でいうと、『思考系脳番地』はよく機能しているいっぽう『感情系脳番地』の働きが乏しくなります。育児や介護が終わった後に“燃え尽き症候群”になるケースが多いのはこのためです」
感情脳の衰えは認知症のリスク要因になってしまうため、十分な注意が必要だ。
「脳は、使えば使うほど、死ぬまで鍛えることができるもの。そのため、いくつになっても脳を成長させること、すなわち“育脳”は可能なのです。50代の女性にとっては、ドキドキする気持ちや新たな発見で感情脳を刺激することが育脳を促すのに有効です。そのためにはまず“自分を見つめ直すこと”から始めるとよいでしょう」
加藤先生が推奨するのは、人生50年を振り返る「レビューノート」を書くことだ。
「自分のこれまでの人生を振り返り、過去に成し遂げたこと、経験したこと、何が楽しかったか、どんな喜びがあったか、人生の積み重ねをどんどんノートにつづって振り返りましょう。人生100年時代、中間地点の50代で行う自己回帰は、感情脳を鍛えるのにとても効果的です。そこに、忘れていた活力を取り戻すためのヒントがあるはずです」
この「レビューノート」のほかにも、日常生活のちょっとした心がけで感情脳を鍛えることができるという。
そんな“感情脳を刺激する育脳メソッド”を加藤先生に伝授してもらった。