忘年会や年越し、新年会……。今年は3年ぶりに家族や友人で集っての会が増えているだろう。卓を囲み、皆でおいしいごはんやうまい酒を愉しむ。幸せな暴飲暴食に違いない。だが、正月休みも終わり、日常モードに頭を切り替えたとき、突然「太ったかも」「体が重たい」と自分の体の変化に気づく。そこで体重をなんとかしようと「リセット断食」に取り組む人も多い。
酵素ジュース断食、水断食、スープ断食……断食にもいろいろあるが、基本は、固形物の食事を全く摂取せずに数日間過ごす、という方法が多い。断食はたしかに体重の変化がすぐに現われ、手応えを感じやすいダイエット法。また、日ごろ働きすぎの胃腸を休めるために有効な方法とも言われている。だが、極端な食事制限により、リバウンドや健康への悪影響、酷くなれば摂食障害などのリスクもあがると警鐘を鳴らす専門家も多い。
なかでも、断食終わりの「回復食期」と呼ばれる、まるで食事を摂取していなかった時期から日常の食事に戻すための準備期での危険性について、発酵料理研究家の真藤舞衣子さんは語る。
「回復食期に多くの人が取り入れる、『梅流し』。これは、大根をくたくたに煮た煮汁に梅干しを溶かし入れたものを食べることで、腸内に溜まった便を押し出そうとする食事法のことです。何も胃腸に入れなかった数日を経てこの食事をすると、腸にたまっていた宿便がすべて押し出される、大根汁を飲んでいる傍からドバドバ出ると、もはや定説かのように言われています。
たしかに大根や梅干しは食物繊維や消化酵素、クエン酸など、便秘解消に有効な成分を多く含みます。ですがむしろ、梅流しは大量の大根と1.5リットル以上の大根汁を短時間で摂取することにより、水分量で腸内の不要なものだけではなく、善玉菌などの良いものも流してしまう危険性もあるのです。
また、一度に4~5個の梅干しを溶かすことで、使用する梅干しによっては大根汁の塩分濃度が高すぎる危険性も。むくみや高血圧につながります」
梅流しで全員が出るわけではないのだろうか。
《腸が1mmも反応しない(泣)絶食台無し!》
《ドバドバ出るんじゃなかったの……?》
《摂取した大量の大根と汁が全部お腹に滞留(泣)。むしろ体重増えた……》
SNSでは「梅流し」体験者による失敗談も散見される。
「胃腸の調子、体質で、みんながみんなすぐに大量の便が排出されるとは限りません。かたくなに『梅流し』にこだわる必要はないと思います。もしも回復食期に穏やかに便を輩出したいなら、野菜の揚げびたしや、エクストラバージンオリーブオイルなど少量の良質な油を使用した蒸し野菜、煮野菜などを取ってみてください。ポイントはやわらかい消化のいい野菜と良質な油です。油分が潤滑剤となって、腸に溜まっていたものを流し出してくれます」
体調に気を付けながら、無理のない断食、回復食を目指そう。