■はしかの感染力はインフルエンザの9倍!
はしかは、それほど感染力が強いのだ。全員が免疫を持っていないと仮定した場合、1人の患者が何人に感染させてしまうのかを表す基本再生産数は、インフルエンザが約2人に対し、はしかは12~18人と極めて高い。
「空気感染するため、抗体を持っていない人が感染者と同じ部屋、同じ電車の車両にいれば、ほぼ100%感染します」
感染すれば、10日ほどの潜伏期間を経て、風邪のような初期症状が現れる。
「2~4日ほどは38度前後の熱が出たり、咳、くしゃみ、鼻水、目の充血などの症状があります。特徴的なのは、一度熱が下がった後、再び上がり、体中に広がる赤い発疹です」
通常は10日ほどで症状は落ち着くが、はしかで怖いのが合併症。国立感染症研究所によると、はしかによって約3割の人に合併症が引き起こされる。その半数を占めるのが肺炎で、高齢者にとっては死に至るケースも。
「赤ちゃんの場合、母体からの免疫がなくなる生後6カ月から、ワクチン接種できる1歳までに感染リスクが高まります。両親ばかりでなく、祖父母も気をつけなければなりません」
東京都ではしかの感染者が100人を超えた2019年の推移を見ると、4~5月にかけて増加傾向が見られているように、春の流行が顕著だ。
■花粉症や寒暖差などで免疫力が落ち、人との交流が増える春が危険
「とくに春は人の移動が多いことが要因だと考えています。新生活のスタートでコミュニティにはじめて出会う人が加わったり、会食も増えます。4月からはじまる大阪万博も、はしか流行の大きなリスクになりうるでしょう」
そもそも春は、感染症にかかりやすい時期なのだという。
「新生活によって生活のリズムが崩れたり、ストレスなどで自律神経が乱れます。また寒暖差が激しくて体に負担がかかり免疫力も落ちます。さらに花粉症で目や喉、鼻の粘膜が炎症を起こしていれば、感染リスクが高まります」
そんな春に注意すべき感染症を、表にまとめた。
「風しんも春から夏にかけて増えるイメージです。はしかよりも症状がずっと軽く、なかには風しんに感染したことに気づかないケースもあるほどなので、それほど神経質になる必要はありません。ただし、注意したいのは妊婦。妊娠10週までに感染すると、極めて高い確率で胎児に心奇形や難聴、白内障などを引き起こします」
1962年4月1日以前生まれの人はワクチン接種をしていない可能性が高く、1979年4月2日から1990年4月1日生まれの人は個別接種のために、接種率が低い傾向があるといわれる。