■年々増え続ける間質性肺炎患者
「階段を上るときに息苦しさを感じるようになり、次に、歩いているときや、衣服の着脱という日常動作だけで息苦しいと感じ、最終的には、身動きしていなくても、息苦しくなってしまいます」
厚生労働省によれば、2023年10月のある日の時点で、継続して医療を受けている間質性肺疾患の総患者数は147,000人で、前回調査時(2020年)の112,000人より、35,000人も増加している。
間質性肺疾患による死亡者数は、2023年に23,875人にのぼり、3年前の19,220人より4,655人も増えていることになる。
また、死亡者の数を年齢別で区切ってみると、50代あたりから増え始め、年代を経るごとに増加していく傾向がみられる。
「ここ数年、厚労省公表の患者数が増えているように見えますが、医学の進歩によって、病気の特定がよりしやすくなったことの表れともいえます」
直近で年間2万人以上が亡くなっているとみられる間質性肺炎は「数十種類ある」という。
「大きく分けて2とおりに分類できます。ひとつは、その原因がハッキリしている間質性肺炎です。
これは女性に多い関節リウマチなどのや、抗生物質などの薬剤の副作用によるもの、放射線治療や抗がん剤治療の影響、アレルギー物質やアスベストなどのを吸入してしまったことによる影響、マイコプラズマ肺炎や新型コロナウイルスの影響など、さまざまな原因があります」
■怖いのは原因不明の間質性肺炎
これらの「原因が明らかな間質性肺炎」にった場合は、まずは「原因の除去」から始めることが多いという。
「薬をやめる、放射線治療をいったん停止する、ハウスダスト除去などをします。マイコプラズマ肺炎や新型コロナウイルスの場合は、まずそちらの治療をします。
そのうえで、ステロイドの服薬などで治療していきます」
■余命3年とも……早期に発見できるかが生死の分かれ道
一方で、「原因がわからない間質性肺炎があるんです」と大橋先生は説明する。
「これにも多くの種類がありますが、こちらを全般的に『特発性間質性肺炎』と呼んでいます。これは、難病指定もされている、治療が難しい病気です。
この特発性間質性肺炎の大多数を占めるのが『特発性肺線維症』で、発症してしまうと『平均生存期間3~5年』とされているんです」
なんとも恐ろしい「平均生存期間3~5年」の特発性肺線維症。患者の男女比率は2対1程度。
「この特発性肺線維症は、ステロイド治療の効果が薄いため、一昔前までは『肺移植しかない』とも考えられていました。
しかし近年では新薬(オフェブなどの抗線維化薬)も承認されていますので、肺が硬くなるのを抑える治療ができます。そのほかの治療としては、酸素投与や肺移植などもあります。息切れや、咳が止まらないなどの症状があったら、加齢のせいと思わず、かかりつけ医に相談してください。
間質性肺炎は胸部CTスキャンやレントゲン写真で発見できますし、健診や人間ドックなどで見つかる場合もあります」
早期発見であればあるほど、治療の効果が上がり、より症状を抑えることができるという。
「階段を上ると息が切れる」とか「風邪をひいてないのに乾いた咳が続く」のは、体が発する警告なのかもしれない。年のせいとせず、早めに受診し対策することが大切だ。
