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「『相続するほどの財産はないが、葬式費用は自分で用意したい』と思う方は多いでしょう。ですが、銀行預金は契約者が亡くなった時点で『凍結』され出金も入金もできなくなることがあります。凍結は相続の手続きが終わるまで続き、せっかく用意した葬式費用が間に合わない事態も。そんななか、注目を集めているのが『遺言代用信託』です」

 

そう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。遺言代用信託とは、契約者があらかじめ払い出しの時期や金額、受取人を決めて信託銀行などにお金を預け、時期が来たら銀行が契約どおりにお金を払い出す仕組み。その注目度は’11年にはわずか67件だった契約が’12年から急激に増え、昨年末には累積契約数が13万人を超えたことからも明らかだ。

 

そんな遺言代用信託の特徴は大きく3つあるという。荻原さんが解説してくれた。

 

【1】葬式費用を確保し簡単に出金できる

 

「契約者は自分の死後、たとえば200万円を一時金で、喪主となる子どもが受け取る契約を結んでおきます。実際に契約者が亡くなったら、受取人である子どもが、死亡診断書や身分証明などを提示して手続き。一時金は受取人の口座に振り込まれるため、預金凍結に関係なく出金できます」

 

【2】相続のもめ事を防ぐ遺言書代わりになる

 

「信託協会の調査では、50歳以上で1,000万円以上の資産を持つ方の83.8%が相続対策をしていません。その理由を問うと、53.3%が『相続税がかかるほどの財産はないから』と答えました(’15年)。ですが、遺産分割が原因で家庭裁判所が調停や審判を受理するのは年間約1万5,000件。うち、遺産総額が1,000万円以下のケースが31.9%、5,000万円以下まで広げると74.9%にのぼります(’14年・司法統計)。相続でもめるのは、相続税の対象になる資産家より、ごく普通の家庭が多いのです。遺産がそれほど多くない家庭では遺言書を作成しなくても、遺言代用信託などで遺産分配を決めておけば、ある程度相続のもめ事は防げます」

 

【3】管理手数料が無料で、元本が保証される

 

「遺言代用信託は預入金額が200万〜3,000万円が一般的です。信託銀行はまとまったお金を預かり、運用した利益の一部を受け取るため、手数料を取らない銀行が多いです。顧客の預けたお金が減らない安心感が、人気の一因でしょう」

 

ただし、遺言代用信託の対象は現金・預金に限られるため、不動産は別の対策が必要だ。もうすぐお盆。久々に家族がそろうこの季節がチャンス。親がまだ元気なうちに、相続を「争続」にしないための話し合いを始めてみては?

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