「遠い故郷にある墓を、親が亡くなった後も維持管理できるかは切実な問題です。そんななか『墓じまい』が注目されています」
そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。墓じまいとは、古いお墓を撤去し遺骨を新しい供養先に移すこと。こう書くと簡単そうだが、実は面倒な手続きや交渉などがたくさんある。荻原さんが解説してくれた。
「まずは行政手続きです。墓地埋葬法に基づき、古い墓地にある埋葬証明書と、新しい供養先の受入証明書を持って、古い墓のある自治体から改葬許可を得ねばなりません。次に新しい供養先の選定です。最近多いのは永代供養墓といって、お墓参りをしなくても、墓地の管理者が永久に供養と管理をする墓です」
さらに費用もかかる。墓石の撤去や整地には一般的に1平方メートル10万円〜といわれているが、墓が込み合って重機が使えないなどの理由で高額になることも。
「古い墓の魂を抜く仏事などのお布施や、墓が菩提寺にある場合は、檀家をやめるための『離壇料』が必要です。離壇料は通常3万〜10万円程度ですが、高額を要求され、もめるケースもあります。新しい供養先にも、納骨料などを払う必要があります」
こういった複雑な墓じまいの過程を、一律料金で代行するサービスが出てきたという。
「(株)まごころ価格ドットコムの『墓じまいまごころパック』は、行政手続きから墓石の撤去・整地、新しい供養先の紹介までが36万8,000円。菩提寺との交渉は含みませんが、自宅に遺骨の一部を置く小さな骨壺や納骨家具が用意され、手元供養ができると好評です」
また、費用のかかる墓石の撤去・整地に特化したサービスもある。
「(株)エフ・コネクトは、複数の墓石解体業者から無料で一括見積りを行います。明確な料金体系がないので、良心的な業者を選ぶためには有効なサービスでしょう」
僧侶が代表を務めるNPO法人やすらか庵でも、墓じまいの相談や代行サービスを提供。墓石の撤去・整地には3平方メートルの墓地で約18万円。行政手続きの代行や海上散骨なども、別途料金表が提示されている。
墓じまいの複雑な手続きを代行してくれるサービスだが、荻原さんは利用する際の注意点をこう語る。
「これらのサービスを利用する際は、たとえば行政手続きの提出まで代行可能か、方法の案内までかなど、代行の範囲をよく確認してください。丸投げできると思っていたら、追加料金を請求されるというトラブルが起こりかねません」