「みかんにはビタミンA、Cのほかカリウムなどのミネラル類、食物繊維などが豊富なことはよく知られていますが、ポリフェノール類のヘスペリジンと、プロビタミンA物質のβ-クリプトキサンチンが柑橘類の中でも圧倒的に多く含まれており、特に注目を集めているのがβ-クリプトキサンチンなんです」
そう語るのは、みかんについて日夜研究を重ねる農研機構所属の研究者、杉浦実さん。一般に『みかん』と呼ばれるのは日本生まれのウンシュウミカンのこと。その健康効果がいま、再評価されている。そんな、再評価につながったのがβ-クリプトキサンチンの存在だ。
「静岡県浜松市の三ヶ日町では、住民の多くがみかん産業に従事しているため、みかんの摂取量が著しく多い地区。みかんを多量に食べる住民から、ほとんど食べない住民までいるため、’03年に住民を対象としたβ-クリプトキサンチンの有用性を解明する調査研究を開始。結果、血中β-クリプトキサンチンの濃度と、さまざまな健康指標との関連が明らかになりました」
みかんは「肝疾患予防」「動脈硬化予防」「糖尿病予防」「骨粗しょう症予防」「脂質代謝異常症予防」などの生活習慣病予防にも効果的だという。しかし、あまりに身近なくだものすぎて、みかんのことをあまり詳しく知らない人も多いのでは?そこで、ソボクな疑問に杉浦さんが答えてくれました。
【Q1】1日何個まで食べていい?
「個人差がありますが、1日5~10個程度なら問題ありません。三ヶ日町の研究で、毎日3~4個の摂取で生活習慣病予防が期待できることがわかっています。普通のサイズのみかん(70~80g程度)は1個約35キロカロリー。お茶碗1杯分のごはんとみかん8個のカロリーがほぼ同じです」
【Q2】みかんを食べると肌が黄色くなるのはなぜ?
「毎日3~4個食べ続けると手のひらが黄色くなります。これはβ-クリプトキサンチンが皮下組織に蓄積され、吸収率の高いカロテノイド色素が透けて見えるため。柑皮症といいますが病気ではなく、われわれは『健康への切符』と呼んでいます。みかんを控えると元に戻ります。皮下脂肪が多い手のひらに目立ちますが、体内の組織に蓄積されています」
【Q3】食べる前にもむとおいしくなるってホント?
「もんでも糖の量は増えません。細胞が壊れて酸味成分であるクエン酸を消費するため、酸味が減った分甘く感じるだけでしょう。逆にストレスを与えることで味は非常に悪くなります」
【Q4】おススメの保存方法は?
「みかんは涼しくて風通しのよいところ、気温は8~10度くらいでの保存がベストです。5度の冷蔵庫は温度が低すぎ、味の低下を招きます。また、箱で買った場合は上下を逆さにして、裏底から開けましょう。底にあってストレスがかかっていたみかんを傷む前に食べられますし、箱内の空気の流れもよくなります」
【Q5】外果皮の農薬は洗ったほうがいい?
「みかんは虫がつきやすいので無農薬で栽培できるものはほぼありません。ですが、現在は農薬に厳しい基準があり、消費者が食べるときに人体に害のあるものはほぼないと言え、洗う必要はありません。いまはワックスをかけることもほとんどないです」