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「来春『標準生命表』が改定されて、影響を受けるのは、“掛け捨て”の死亡保険の保険料。これは安くなります」

 

こう語るのは、ファイナンシャルプランナーで「家計の見直し相談センター」代表の藤川太さん。標準生命表とは、性別、年齢別の平均寿命(死亡率)などをまとめたもの。生保各社が加盟している公益社団法人「日本アクチュアリー会」が、保険料の算出基準となる標準生命表を来春、11年ぶりに改定する見通しだ。改定の理由は“ご長寿化”。長生きする人が増えれば、そのぶん保険会社が支払う死亡保険金の負担も減り、保険料の値下げが可能になる。

 

「前回(’07年)の改定で、下げ幅は生保会社によって違いましたが、8~16%ぐらい掛け捨ての死亡保険の保険料が下がりました」(藤川さん)

 

掛け捨てではない「終身保険」の保険料についても藤川さんが解説する。

 

「終身保険は来春も若干値上がりする可能性がありますね。実際、今年の4月2日から、終身の保険料は大幅に上がりました。日本生命は、20%以上の値上げを公表しています。ただこの値上げに関しては、標準生命表の改定よりも、予定利率の変動が大きく影響しています」(藤川さん)

 

私たちが毎月支払っている保険料の一部は、保険会社が株式や不動産などに投資して運用している。その運用で見込める利回りを表す予定利率が低ければ、保険会社の運用利益は減っていくので、保険料は高くなる。

 

現在はマイナス金利政策によって長期金利の低下が進んでいる。国債の利回りも大幅に下がり、4月から標準利率は1%から0.25%に引き下げられたことで、予定利率が低くなった。今月から終身保険などの保険料が値上がったのは、これが原因だ。

 

そして来春、標準生命表が改定されれば、長寿化によって増える医療保障などの保険金の負担を、保険会社は保険料に反映するかもしれない。つまり、今年だけでなく、来春にも終身の保険料が“再値上げ”する可能性があるのだ。

 

今回、大手生保5社(日本生命、アフラック、かんぽ生命、第一生命、明治安田生命)に、「標準生命表改定に合わせて、来春にも保険料を改定する予定はあるか」と質問したところ、各社「未定です」という回答だった。とは言うものの、生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんは、値上げに備えて「これから定期保険に入るなら、保険料が下がるまで待ったほうがいい」と語る。

 

「貯蓄性のある商品や、長生きしていくうえでのリスクをカバーできる終身医療保険も値上がりするでしょうから、今後は終身より定期保険に見直したほうがいい。定期保険は値下がりすると思います。保険会社も損をしたくないので、まさにいま掛け捨ての商品を勧めてくるかもしれませんが、焦りは禁物。『もうちょっと待てば安くなる』と自分に待ったをかけてあげて」(柏木さん)

 

生涯保障の終身保険は、一昔前までは魅力的な商品だった。マイナス金利やご長寿化の影響で、保険の常識は変わってきているという。

 

「値上がり、値下がりする商品をしっかりと見極めて、新しい視点で保険を見直すことが必要です」(柏木さん)

 

入ったらもう安心、というわけではなくなってきた保険。「見直しありき」で考えるべきなのかも。

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