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先月、神戸港で猛毒の殺人ヒアリが国内で初めて発見されたことを受け、本誌は「東京、横浜、名古屋、大阪の港も危険だ」という警告記事を掲載した(6月27日発売号)。すると予想どおり、名古屋港、大阪港、東京港、横浜港、博多港でも続々とヒアリが発見された!ヒアリの上陸ラッシュはこれからも続きそうな勢い。ますます予断を許さない状況になってきた。

 

そこで本誌は、アリ研究の第一人者で、東京大学農学部応用生命科学研究科講師・寺山守先生(59)に協力を要請。7月19日、潜んでいるかもしれないヒアリ調査のため、先日上陸が確認された東京港・大井ふ頭周辺に緊急出動した。

 

【10時30分】大井ふ頭のコンテナヤードに到着

 

コンテナを運ぶ大型トレーラーがひっきりなしに行き交う中、さっそく調査隊はふ頭脇の側道などを1時間以上かけて探索開始。その間アリはたくさん目撃したが、どれもこれも日本のアリばかり。ヒアリらしき集団はいっこうに見つからない。そこで寺山隊長が、「ヒアリは油系のエサを好むので、ポテトチップスを側道周辺に置いて、数時間後に現場に戻りましょう」ーー。それまでの時間、調査隊は大井ふ頭周辺の公園まで、捜索範囲を広げることにした。

 

【12時10分】みなとが丘ふ頭公園を捜索

 

まずは公園周辺の土手を調査。寺山隊長が、“根堀”(アリ調査に使う硬いスコップ)を使って土をかき出してみると、ムネボソアリ、トビイロシワアリ、オオズアリ、サクラアリ……といった日本のアリが1メートル四方に7種類も出てきた。ヒアリが増殖すると環境かく乱者となって、周辺の昆虫やアリなどがいなくなってしまうそうで、まだこの辺りには侵入していないようだ。ところで隊長!ヒアリが潜んでいそうな場所や巣を作る場所はどこですか?

 

「温かいコンクリートと土の境目などに潜んでいる可能性があります。また、ヒアリにとって巣を作りやすい環境は、公園など背丈の低い植物が生えているような明るく整備されたところ。とくに要注意なのは芝生が多い公園です。そういう場所に“富士山形の大きなマウント状の巣”があれば、すでに定着しているということなので非常に危険です」(寺山隊長・以下同)

 

【13時05分】大井ふ頭から500メートル離れた大田区東海4丁目付近へと移動

 

’10年、特定外来生物・アルゼンチンアリが発見された場所にも足を運んだ。寺山隊長の、「ヒアリも同じような場所を好んで巣を作る」という専門家らしい鋭い読みからだ。さっそく、当時発見された道路の側溝脇の植え込みなど、時間をかけて捜索。素人目にはどう見ても普通の道路なのだが……。もしこんな場所にヒアリが潜んでいたら、犬の散歩途中に愛犬が刺されることだってありえそう。

 

「ヒアリは夏から秋にかけて、新しい女王が作られ各地に飛んでいきます。女王アリは上空100〜200メートルぐらいまで舞い上がり、そこから風の流れに乗って10〜20キロぐらい飛ぶのです。そして行き着いた土地に定着し、巣を作り、また新たな女王が作られる。これを繰り返しながら生息範囲を広げて繁殖していくのです」

 

女王アリは1日で1,000〜1,500個の卵を産むそうだ。国内で定着する前に発見し、駆除しないと、爆発的に増える危険性がある。

 

【13時50分】城南島海浜公園近くの歩道も調査

 

ここも7年前にアルゼンチンアリが発見され、駆除された場所である。現場に到着直後、調査隊に緊張が走った!「あっ、これはアルゼンチンアリかもしれない!」と、やや興奮気味に話す寺山隊長。だが、分析の結果、当初アルゼンチンアリかと思われたアリは、日本のトビイロケアリであることが判明。どうやらこの場所からは、完全に駆除されていたようだ。その後も側道を中心に周辺を捜索したが、ヒアリはいなかった。

 

【16時30分】午前中にヒアリをおびき寄せるために、ポテトチップスをまいた現場を再び訪れる

 

コンテナヤード近くの側道にまいたポテトチップスにはアリが集まっていた。しかしそこにいたのは、幸か不幸かターゲットであるヒアリではなく、日本のトビイロシワアリ……。結局、6時間の現地調査ではヒアリを発見できなかった。

 

「7年前、アルゼンチンアリがコンテナヤードから離れた場所で定着したことを考えると、ヒアリも意外な場所で見つかる可能性があります。今後もふ頭周辺の広い範囲でのモニタリング調査が必要だと思います。それと、中国から入ったコンテナは、国内各地へと運ばれていく。コンテナの最終到着地でのチェックも必要になってくるでしょう」

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