「料理と科学の実験は、とても似ています。料理のレシピは、実験のプロトコル(手順)と同じなんです」と話すのは、大学で分子生物学の研究・教育という仕事をしながら、1児の母としても活躍する“リケジョママ”の「nicky」さん。

 

彼女の、高校生になる息子との生活の思い出にと書き始めたブログ「科学者ママのお料理ノート」は、1日3万アクセスの人気に。料理も、これまで10以上の料理コンテストで受賞するほどの腕前だ。’13年には著書『科学者ママnickyのなるほど段ちがい!お料理ノート』(主婦と生活社)も出版された。

 

「分子生物学の実験は、誰が同じ手順でやっても再現できなければいけません。料理もそうで、材料、調味料、手順、時間……と、レシピどおりに行なえば、味が再現できます。この『再現性』が大切。だから、ブログにはレシピをていねいに書いています」(nickyさん・以下同)

 

そんなnickyさんには「やり方や材料を少しずつ替えるだけで、結果が変わっていく」という、科学の実験から着想を得た、節約料理術がある。そのひとつが、ハンバーグのアレンジだ。

 

「お肉は同じでも、玉ねぎの代わりに長ねぎで作ってみたんです。そうすると、お肉がより詰まった感じになり、香りもよく、ワンランク上のごちそうに変身しました」

 

もうひとつ、nickyさんの科学者ならではの目線が生かされている節約法が、肉の保存・解凍法だ。時間短縮の理由もあって、彼女の家では、肉をキロ単位でまとめ買いしている。鶏肉の場合、胸肉は塩漬けにして保存するそうだ。

 

「2日ほど塩漬けにしてから冷凍します。塩の量はお肉の重さの1〜2%。鶏肉が1キロなら、密閉容器に10〜20gの塩とともにつけて、冷蔵庫で寝かせます。2日後、胸肉を1枚ずつに分けて、ラップで密封して冷凍庫へ。これで1カ月近く持ちますよ」

 

塩を使うと、安い肉も高級品のように変化するというメリットもある。

 

「お肉に塩をかけると肉の組織の水分が抜けて、全体が引き締まって弾力が出ます。焼いたときにもパサパサしません。安い豚肉・鶏の胸肉も、これでやわらかくジューシーな味わいになります。材料費の節約になります」

 

そして、保存と同じように肉の解凍にも彼女の腕が生かされる。

 

「わが家では、その日の夜にお肉を食べるときは、朝のうちに冷蔵庫から出しておきます。お肉は、焼く前に室温まで解凍できていることが大事。そのためにも、自然解凍させるか、ぬるま湯につけるなどして、確実に解凍させましょう」

 

また、冷凍庫で忘れられたまま、何カ月も放置された肉が見つかったときも、捨てずにあきらめないで!とnickyさんは語る。

 

「冷凍焼けして白くなったお肉には、少しお塩をかけて、ヨーグルトを絡ませて湿らせ、そのまま2日ほど置きましょう。浸透圧の関係で水分が戻り、赤身肉に復活します。お魚にも応用できますよ」

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