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「子どもや家族に迷惑をかけたくないから、将来は高齢者施設に――。そう考えている人は多いです。しかし、そのほとんどの人たちが、実際にどのくらいの総額費用がかかるのかイメージできず、不安をかかえていらっしゃいます」

 

そう語るのは、『介護施設&老人ホームのさがし方・選び方』の著書もある、齋藤直路さん。そこで今回、齋藤さんに介護付き有料老人ホームの月額使用料や、介護度ごとの月額介護サービス費用(介護保険自己負担額が1割の場合)を算出し、生涯の総支払額をシミュレーションしてもらった。

 

「介護費用は各自治体によって若干変化します。今回の設定では、首都圏のベッドタウンを想定していますが、都心部の場合はさらに1割ほど高くなることが考えられます。また、介護施設の利用料金、要介護度の変化、入居期間は、複数の施設を調査して、一般的なケースを想定しました。死亡年齢は現在の女性の平均寿命87歳よりも4~5年延びることが予想されますので、92歳(93歳の誕生日の前日)に死亡すると仮定しています」(齋藤さん)

 

例:85歳のAさんは自宅での生活も可能な要支援2だったが、一人暮らしということもあり、安心するために早めに入所を選択(※入居金720万円)。24時間の見守りと、介護を受けることができ、アクティビティも楽しめた。入所3年目に要介護1に認定された。5年目を迎える89歳で肺炎のため入院。退院後の1年は要介護4だったものの、その1年後に寝たきりとなり、要介護5に上昇。施設のスタッフに見守られながら、92歳の生涯を終えた。

 

【介護付き有料老人ホーム施設での介護費用シミュレーション】

 

(1)要支援2の場合(85歳~86歳)

介護費用の目安:約9,200円

月額利用料:約20万円

合計:約20万9,200円

 

(2)要介護1の場合(87歳~88歳)

介護費用の目安:約1万6,000円

月額利用料:約20万円

合計:約21万6,000円

 

(3)要介護4の場合(89歳)

介護費用の目安:約2万2,000円

月額利用料:約20万円

合計:約22万2,000円

 

(4)要介護5の場合(90歳~92歳)

介護費用の目安:約2万4,000円

月額利用料:約20万円

合計:約22万4,000円

 

85歳から92歳までの8年間で合計:2,813万2,800円(内訳:入居金720万円+20万9,200円×24カ月+21万6,000円×24カ月+22万2,000円×12カ月+22万4,000円×36カ月)

 

介護付き有料老人ホームは24時間の見守りや介護を受けることができ、アクティビティも充実。自立棟を併設しているところもあり、元気であれば外出できるため、自由度が高い。ホテルのようなロビーや、快適な居室を売りにしている施設もあり、安心のため、比較的軽度なうちから入所を選択するケースもある。

 

「入居者の約30%が、自立できている人を含めた、要支援2以下です。最近は看取りまでできる施設が多いので、ついのすみかとしての意味合いが強いといえます」(齋藤さん・以下同)

 

入居する際、大きな負担となるのが、入居一時金だ。

 

「入居一時金が0円の施設から、億単位の施設までさまざまです。もっとも多い価格帯は、500万円から2,000万円くらいでしょうか」

 

一時金が安い施設は、月額利用料を高く設定している場合もあるし、その逆もある。

 

「ただし、一時金や利用料の違いが、介護レベルの差につながるわけではありません。たとえば入居金100万円と1億円の施設は、介護レベルに100倍の差があるかというと、それはまったくありません。高額になる理由は交通の便のよい立地や、ホテル並みに設備の整ったハード面に対する費用であることが多いということです。金額を判断材料にせず、必ず体験入居などもして、職員の対応、介護レベル、入居者の表情、リハビリのようすなどのチェックもしましょう」

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