昭和30年代、子どものいる家庭のほとんどの本棚には学習図鑑が並んでいた。「植物」「動物」「地球」「昆虫」「魚」などと種類別に編集された図鑑は、毎年のように改訂版が発行される「静かなロングセラー」だった。ところが今や子ども向け図鑑が大ブーム。年間3万部売れれば大ヒットといわれる分野ながら、現在は208万部を超える大規模市場に。そこで、図鑑の魅力を「誕生から現在」にわたって探ってみた。

 

【黎明期
子ども向け図鑑が誕生したのは昭和31年】1956年(昭和31年)発行の学習図鑑シリーズ(小学館)が最初の子ども向け図鑑といわれている。植物、昆虫、動物と種類別に編集されていて、当時の価格は350円(ケース入り)だった。「緻密なイラストで紹介されていて、写真を使うのは表紙くらいでしたね」(小学館・廣野篤さん)。内容は、形と名前、特徴、飼育法、栽培法などが書かれていて、絵のついた辞書といったものだった。大型犬はなんと「かちく」に分類されていた。

 

【成長期
写真や個体数が増えてより詳しくなった】「このころ(’70年代)の図鑑は、祖父母から孫へのプレゼントに使われることが多かったですね。初期の図鑑との大きな違いは、紹介する昆虫、植物、動物などの種類が圧倒的に増えたこと。たとえば昔の図鑑に”幻の動物”などと紹介されている動物が、今ではふつうに動物園にいたりしますから(笑)。写真が増えたのもこのあたりからです」(学研教育出版・松下清さん)。子ども図鑑といえば、この形が長く常識になっていた。

 

【転換期 さまざまなものを1冊に!
現在の大ブームはここから始まった】今回のブームのきっかけは、’09年発行『くらべる図鑑』(小学館)。現在までの発行部数は累計73万部を突破。それまでの図鑑は、昆虫、動物など種類別に分かれていたが、これは生き物、乗り物、世界と日本など、あらゆるものをくらべる図鑑だ。「1冊まるまる”くらべる”という切り口の図鑑は初めてだと思います。面白い!
と思う感覚は大人も子どもも同じはずなので、特に子どもを意識せずに作りました。おかげさまで大人にも好評です」(小学館・廣野篤さん)

 

【発展期 個性で勝負!
形を変えて進化は続く】『いちばん!の図鑑』(学研教育出版)は動植物だけでなく、「いちばん暑い国」など気象や地球の”いちばん”も大集合。いちばん長いアフリカゾウの鼻は、実物大写真で約5ページ分の折込ページで紹介している。「これまでは、虫、花など種類で分類されていましたが、ひみつ、なぜ、一生、いちばん
を切り口にすることで、間口が広くなったことがヒットした理由のひとつだと思います」(学研教育出版・松下清さん)

 

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