「心を動かされたときに流す涙を『情動の涙』といいます。これは人間だけに備わる特別の機能です。感動の涙を流すことで緊張やストレスに関係する交感神経から、脳がリラックスした状態の副交感神経へとスイッチが切り替わります。たくさん涙を流すほど、ストレスが解消し、心の混乱や怒り、悲しみが改善されます」

 

そう話すのは、東邦大学名誉教授で脳生理学者・医師の有田秀穂先生。涙を流すことは、ストレス解消に大きな効果があるという。そこで、“泣ける”名作映画を映画ジャーナリストの大高宏雄さんに紹介してもらうことに。泣ける映画の秘密を大高さんは次のように語る。

 

「名作映画は、映像、ストーリー、音楽が三位一体となって感動を与えてくれますが、なかでも『泣かせる映画』という意味では音楽が最大の効果を発揮します。理屈抜きで音楽が観客の心の琴線を刺激するからでしょう。今回は、美しい音楽とあいまって心地よい涙を流せる作品を選びました」

 

『レ・ミゼラブル』2012年・イギリス

「我が子をジャン・バルジャンに託して死んでいく薄幸の女性、A・ハサウェイが歌う『夢やぶれて』のシーンに涙。精いっぱい声を張り上げて、絞り上げるような声に胸を打たれました」(大高さん・以下同)

 

『マイフ・フェア・レディ』1964年・アメリカ

「『運が良けりゃ』『君住む街角で』『踊り明かそう』などの大ヒットを生んだ、オードリー・へプバーン主演のミュージカル。美しい名曲の数々が思わず感動の涙を誘う古きよき時代のラブ・ストーリー」

 

『昼下りの情事』1957年・アメリカ

「年上のプレイボーイ(ゲーリー・クーパー)に恋したパリ娘(オードリー・へプバーン)は、彼のハートを射止めるために必死で背伸びするが……。名曲『魅惑のワルツ』が心に残るラブ・ロマンス」

 

『街の灯』1931年・アメリカ

「盲目の花売り娘のために無償の愛を捧げる貧しい男(チャールズ・チャップリン)の物語。感動的なラストシーンの音楽も秀逸。サイレント映画ゆえにより映画音楽が印象的で心に染み渡る」

 

『二十四の瞳』1954年・日本

「叙情性あふれる映像の中で、女教師(高峰秀子)と教え子たちのふれあいを描いた傑作。『仰げば尊し』『浜辺の歌』『七つの子』『故郷』など、子供たちが歌う童謡の数々が涙腺を刺激します」

 

『生きる』1952年・日本

「胃がんで余命いくばくもないと知った市役所の市民課長(志村喬)が初めて生きる意味を自分に問い、貧しい人々のために公園造りに奔走する。黒澤明監督作品。主人公が夜の公園でしみじみ歌う『ゴンドラの唄』が涙を誘う」

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