大阪・北新地。4千店ものバーや高級クラブが軒を連ねる繁華街で今、1冊の小冊子が注目を浴びている。その名も「ホステス心得帖−おもてなしの条件−」。ホステスが接客する際の心構えやマナーについてまとめたものだ。
「これはもともと35年前、北新地社交料飲協会2代目理事長の岡田一男さん(故人)が作成したもの。クラブなどの新人研修で使われていたのですが、いつの間にか消えてしまっていました。ところが、私の先輩がそれをずっと持ってはって。あらためて読ませてもらって、基本中の基本をうまいこと言うてくれてるなあと、感心したんです」
そう話すのは、同協会常務理事の織田高央さん(47)。話に登場する岡田氏は、数多くの飲食店を展開する外食チェーンを創業した実業家だった。岡田氏の作ったマナー集を見た織田さんは、内容がこの時代にも通用すると確信し、現理事長の東司丘興一さん(64)に復刻を持ちかけた。
「ほかのエリアからの出店や世代交代が進み、北新地でも若いママが増えていました。そのため、マナーやルールをママ自身が教えられない、という嘆かわしいことが頻発していたんですよ。この冊子はホステス教育のよいツールになると思い、すぐゴーサインを出しました」(東司丘さん)
こうして誕生した復刻版は、クラブ関係者だけでなく、来店客の間でも話題を呼んだ。「営業マンの精神に通じる!」「会社の新人教育に使いたい」と、復刻版を求める人が増え、印刷版はあっという間になくなった。現在は北新地社交料飲協会のウェブサイトから、内容をダウンロードできる。
「勉強会で披露したい、マナー講座のテキストに使いたいと、全国の女性からも電話がありました」(織田さん)
一読すると、ホステスのあるべき姿、やってはいけない行動などが、48ページにわたって箇条書きされている。たしかにホステスだけでなく、女性全般の人づきあいに役立ちそうな内容だ。中でもとくに有用な「極意」について、小冊子復刻にも携った北新地の“レジェンド”ママ、「クラブ山名」の山名和枝ママ(80・同協会副理事長)に解説してもらった!
【その一】
まずはホステスがしのぎを削る、「美しさの心得」から。
「ホステスの仕事に、じつは美しさはあまり関係ないの。売れっ子というのは、努力家なんです。お手紙やメールを出したり、お電話でお礼を伝えたり。美しくても、じっと座っていて売れるホステスはいません。努力をしている人は、目の輝きに違いが出ます。大切なのは愛嬌です」(山名ママ・以下同)
【その二】
言葉遣いは丁寧に。ただし、TPOによる使い分けが大事だという。
「友達や知り合いにまで、いつも仰々しい言葉を使っていると、他人行儀な感じを与えてしまいますからね」
【その三】
人のことを悪く言うのは、仲間内では楽しいかもしれない。しかし……。
「悪口の話で盛り上がるなんて、ダメよ。ほかの人の悪口、陰口を話しているのを聞いた人は、『この人は自分のこともよそでは陰口を言っているんだ』と、必ず思ってしまいますから」
結局、陰口を言う本人が、いちばん嫌われるのだ。
【その四】
ある程度その人と打ち解けるほど、とくに時間などの約束にはルーズになってしまいがちだ。
「忙しいことを理由にしたりして、つい約束を後回しにしてしまう、という人もいると思います。小さなルールだからと平気で破っていると、『だらしない人』の代名詞としてレッテル貼りされますよ」
【その五】
ママ友の集まりなどで、つい勢いで家の内情をしゃべってしまい、あとあと後悔したことのある人は多いはず。
「何ごとも開けっ広げはいけません。友達とは、つかず離れず、不要なことは言わないくらいがちょうどいいの。こちらだって、重い話は聞かなきゃよかった……。なんて思うこともあるでしょ?」
最後に山名ママはこう語る。
「すてきな男性の陰には、必ず素晴らしい女性がいるの。つまりいい夫には、もっといい奥様がついているものよ」
あなたのホステス力を磨けば、夫も出世する!?