子どもの無駄遣いをやめさせたい。夫に少しでも家事を手伝わせたい。そう思って説得しても、徒労に終わってがっかりした経験はないだろうか。

 

「相手にとって興味のない話やメリットのないことは、いくら正論をぶつけたところで聞いてもらえません。でも、ちょっとしたコツさえつかめば、話を聞いてもらえるだけでなく、相手を動かすこともできるんです」

 

そう話すのは、元駿台予備学校カリスマ講師で、現在、塾経営をする傍ら、東京大学大学院にて「学習環境」をテーマに研究を行う犬塚壮志さん。予備校講師時代は、化学を担当。いかにわかりやすく説明するかを追求した講座は生徒から絶大な人気を集め、3,000人以上を集客した。

 

「難解なことを難解なまま説明しても、理解してもらえない。そこで、生徒に興味を持ってもらい、段階を踏んで理解してもらう説明の“型”を考えたんです」(犬塚さん・以下同)

 

それが、犬塚さんが提唱する「IKPOLET(イクポレット)法」だ。IKPOLETのアルファベットは、次の7つのステップの頭文字を表している。

 

□Interest(興味を引く)
□Knowledge(聴き手の知識にアクセス)
□Purpose(目的を示す)
□Outline(大枠を見せる)
□Link(つなげる)
□Evidence(証拠を示す)
□Transfer(転移)

 

「いわば“理解の階段”。こちらが階段を作ってあげれば、相手は上ってくることができる。つまり、どんな話でもわかってもらうことができるのです」

 

今月4年、このノウハウを紹介した書籍『東大院生が開発! 頭のいい説明は型で決まる』(PHP研究所)を出版すると、瞬く間に広い層から支持を集め、ベストセラーとなった。

 

一見、難しそうに見えるが、このステップの一部を利用すれば、冒頭に紹介したような日常生活の悩みも解決に導けるという。犬塚さんの読者から寄せられた悩みを例に、実践方法を学んでみよう!

 

【 ケース(2)】
「韓流アイドルにハマっている大学生の娘の金遣いが荒く、見ていられません。バイトで月10万円ほどの稼ぎがありますが、すべてをアイドルにつぎ込み、『足りないからお金貸して』という始末。なんとか貯金をさせ、お金の管理を学ばせたいのですが……」(51歳・女性・専業主婦)

 

アイドルに夢中の娘に、突然貯金をしろと言っても、かえって逆効果。

 

「まずは『もし目の前に24万円あったら何に使う?』と、興味を刺激しながら、話を始めましょう(ステップI)。このとき、娘さんが『韓流アイドルのコンサートツアー』と答えても、否定はNG。『でも今、お金足りないからチケット、買えないよね?』と、不安を刺激して話を進めます。次に『じゃあ、自動積立貯金って知ってる?』と何げなく聞いて、相手の貯金に関する知識にアクセス(ステップK)」

 

これから伝える貯金の仕組みをしっかりわかってもらうためには、そこにつながる情報の第一歩を相手の知識にインプットする。

 

「最後に貯金の目的を理解してもらいます(ステップP)。『自動積立貯金は、意志が弱くても無理なく貯金するための方法なの。これなら、チケットが発売されても買えると思わない?』と畳み掛ければ、娘さんも貯金を始める気になるでしょう。ここでのコツは、相手の価値観を否定しないこと。チケットを買いたいという気持ちを利用して、まずは貯金の習慣をつけさせるのです。行動習慣が変われば、そのあと、お金に対する考え方も少しずつ変わっていくはずです」

 

IKPOLET法を日常生活に応用する場合は、最初にどう興味を引くかが肝心だ。夫に家事を手伝ってもらいたい場合も、それとなくご褒美で気を引いて、家事を手伝うことがトクだと思わせるのがポイント。

 

「人間は感情で動く生き物。正論をぶつける前に、相手の感情に訴えて話を聞いてもらう準備を整えましょう」