6月14日に施行される“チケットの転売”を取り締まる新法。これは業者だけでなく、個人も刑罰の対象になるそう。応募しすぎた五輪のチケットは大丈夫?
「観戦したい種目を選ぼうとアクセスしたら、いきなり『大変混雑しております』『お待ち時間:1時間以上』の画面が……。ようやく『1分以内』になったと思ったら逆戻りしてまた『1時間以上』の数字に。結果、まだ予約できていません」(主婦・56歳)
「1時間以上待たされ、ようやく種目を選んで計30万円分に。そして、最後に手続きでかけた番号認証確認の電話がなんと『話し中』。つながったのは夜中の3時でした、眠い」(主婦・56歳)
5月28日まで受付け中の2020東京五輪観戦チケットの抽選申し込みは、特設サイトにアクセスが殺到して大混乱。16日現在で、累計アクセス数は約640万件にのぼっているという。
「競技ごとの申込み数は公表されていませんが、開会式(最高価格30万円)を筆頭に、競泳決勝(同10万8,000円)、体操男子決勝(同7万2,000円)などは日本選手の金メダルも期待され高倍率になっていると思われます。当たる確率も、抽選結果を見ないとわからない状況です」(スポーツジャーナリスト)
ここで上限60枚まで申し込んでおいたほうが、当選確率は上がるのだろうが「当選分の全額を一括で支払い」というルールもある。6月20日の当選発表で最大当選枚数30枚全部当たっていたら支払いも大変、リボ払い地獄に陥る人も……。
「30万円でも大丈夫。ママ友たちと約束していて、余りが出たら『定価で買ってもいい』って。ダンナの同僚で『3割乗せてもいいから見たい試合がある』っていう人もいるから、譲ったらお釣りがくるなあ」
と前出の主婦は言うが、この発言に「ちょっと待って!」と言うのはレイ法律事務所の松下真由美弁護士だ。
「五輪の観戦チケットをはじめ、スポーツ、コンサートなどの興行チケットの不正転売を禁止する新しい法律『チケット不正転売禁止法』が、6月14日に施行されます。これに違反した場合は、『1年以下の懲役』もしくは『100万円以下の罰金』またはその両方の刑罰が科せられるんです」
では、仲のよい知人に売ることもできないのだろうか?
「この新しい法律における『不正転売』とは、(1)興行主の同意なしに、(2)反復・継続して、(3)定価を超える金額で、譲渡すること――を指します。不正転売することと、不正転売を目的として譲り受けることが禁止されるため、前出の主婦の方のように『3割乗せて』譲った場合は違法となります」
経済評論家の加谷珪一さん、松下さんに、この新法の「素朴な疑問」に対して詳しく解説してもらった。
【公式以外のオークションサイトでの購入は?】
組織委広報担当によると、現段階で、メルカリ、楽天、Yahoo JAPAN!、チケットストリートは、東京2020大会関連のチケットは扱わないと意思表示をしているとのこと。
この主要サイト各社の動きによって、「定価を上回る五輪チケットの取引をするオークションサイトは少なくなるだろう」と見ている加谷さん。
「違法なサイトは減るでしょうが、心配なのは、五輪チケットの『振り込め詐欺』が横行すること。今回のアクセス状況を見ても人気チケットはかなりの争奪戦です。たとえば『公式サイト以外の唯一の正規の入手ルートです』などとうたうメールが届いたら、通常なら信じない人も、喉から手が出るほど欲しいチケットを前にして、冷静さを欠いてクリックする人がいないとも限りません」
【知らない人から買ったチケットでも入場できる?】
「五輪のセキュリティ体制がどれほど厳しいかまだわかりませんが、今後は、そのほかの興行でも、“購入した本人”でないと、入場を拒否されるケースが増えてくると思います。入場時に厳密な本人確認が必要だった宇多田ヒカルさんのコンサートのように、新法は厳しい本人確認を促進していくものになると思います」(松下さん)
【定価より100円でも高く売ると逮捕?】
「非公式のリセールサイトで出品して、もしも定価を超える金額で落札されてしまったら、『不正転売』の対象になりますので、違法となり、犯罪です」(松下さん)
ただ、違法だからといって、すぐに逮捕されるということではないようだ。
「今回の新法は、転売を『業』として行っているかどうかが重要、『不正転売目的』かどうかに主眼が置かれています。不正に販売する回数が多く、大きな金額で行われているなど、『継続・反復性』が強い悪質な場合から、警察は動くでしょう。主婦の方が1回、定価の数百円増しで売ってしまったという程度では摘発されないかとは思いますが、違法には変わりありません」(加谷さん)
正々堂々と力を競う五輪選手を応援するなら、チケットもクリーンに手に入れて観戦しよう!