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高齢者が起こす痛ましい交通事故が続いている。以前から多くの自治体が免許返納を後押ししようと特典を設けているが、期間や利用回数に制限のあるバス券や、提携タクシーの1割引券などがほとんどで、「免許がなくても気軽に移動できる」状況とはいえない。そんななか、免許返納や家計のスリム化に役立つ「無料タクシー」が急増中だという。経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれた――。

 

群馬県高崎市は今年6月から、全国で初めて、無料タクシーの運行を始めました。

 

「お店ぐるりんタクシー」と名付けられた無料タクシーは、高崎駅と近隣の7つの商店街を結ぶルートを巡回します。車いす1台を含む5人まで乗車でき、ルート上ならどこでも乗り降り自由。年中無休で誰でも利用でき、何度乗っても無料です。

 

高崎市は、駅周辺から、昔ながらの商店街へと人を誘導するために始めたようですが、車を持たない高齢者にもたいへん喜ばれる取り組みだと思います。

 

民間企業も、無料タクシーの運行を模索しています。昨年末、東京では「0円タクシー by 日清のどん兵衛」という無料タクシーが登場し、話題になりました。インターネット関連企業のディー・エヌ・エーによるもので、スマホアプリでタクシーを呼びます。車体は派手なディスプレーが広告が施され、乗客はCM動画を見ながら移動します。

 

運賃は広告主が負担するため、乗客は無料。現在、サービスは終了していますが、新たな広告主で第2弾が行われるかもしれません。

 

また、福岡市では今年3月から、ベンチャー企業nommocが無料タクシーを運行しています。

 

乗客は移動中にCM動画などを見ることでタクシー代が無料になり、運賃は広告主が負担するのは先のどん兵衛タクシーと同じですが、nommocは、配車アプリで乗客の趣味などを問うアンケートを実施。AIが瞬時に分析して、乗客に合わせたCM動画を流します。そのほうが広告効果は高いため、広告収入も大きく、継続的な運営ができるのでしょう。

 

こうした移動の無料化は、高齢者だけでなく、現役世代の生活も変える可能性を持っています。無料タクシーが普及すれば、マイカーを手放す方が増えるでしょう。旅行など長距離や長期間の移動には、カーシェアやレンタカーを利用すればいいのです。

 

マイカーを持つには、車の取得費のほか、ガソリン代や駐車場代、自動車税、車検費用などもかかります。地域や車種などによりますが、月3万~5万円ほどのランニングコストが不要になれば、家計はぐっとスリムになります。

 

タクシーは、電車やバスより低コストで導入できます。官民ともに、安くて便利なタクシーの普及を進めてほしいものです。

経済ジャーナリスト

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