『天邪鬼のすすめ』下重暁子さん語る「人生100年時代の処世術」

「これまでに100冊くらい本を書いてきた私は、80代に入ってようやく、『本当に書きたいこと』を書くためのスタートラインに立つことができたと思っています。『女性の人生100年』といわれる時代ですが、『前半50年』は、その意味でいうと、本番に向けての『準備期間』でいいんです」

 

こう話すのは、ベストセラー作家の下重暁子さん(83)。最新刊『天邪鬼のすすめ』(文春新書)でその半生をつづっている下重さんだが、著書のタイトルに込めた意味を、こう明かす。

 

「天邪鬼とは民話に出てくる妖怪で、寺の入口などで仁王様に踏まれている小鬼。私は大好きなんです。反骨精神を忘れず、あえて人と逆のことをしてみる。その前提条件は、『自分で考え、自分で決める』。つまり、精神的に自立していることです。それができれば、50代以降の『後半50年』を人に頼らず自分の本当にやりたいことができる。それまで家族のために尽くしてきた人も、自分が主役で生きていくことができると思うんです」

 

若々しく目を輝かせて語る下重さんに、“天邪鬼で生きる”ための知恵を教えてもらった。

 

■家族に縛られない

 

「夫や子どもに期待されすぎるのが苦しいように、逆に相手に期待しすぎてもいけません。私の母は、私が社会人になってからもずっと『暁子命』のように振る舞っていましたから、それはとても苦しく感じられたものでした」

 

下重さんは、家族といえども、「個々がすきなことを好きなように生きたほうが、お互い健全でいられる」のだと続ける。

 

「結婚しても子どもが生まれても『個』というものがあります。妻として母としての役割で生きてきて、必要以上に家族というものに縛られるのは、誰のためにもならないんです」

 

■夫をうまく使う

 

テレビ局の報道マンと結婚した下重さんは、夫のことを「つれあい」と呼ぶ。一人暮らしのころから、彼は買い物にも行き、料理をつくって酒を楽しむマイペースな生き方をしていた。その後に就いた大学教授を辞めた後は、時間のある限り毎食、料理を作るという。

 

「つれあいは、地に足のつかない私に生活の大切さを感じさせてくれました。好きなこと、向いていることを、それぞれがしているというのが、私たち。使えるところを使いあって、暮らせばいいんです。今日も、帰れば晩ご飯ができているはずですよ(笑)」

 

■夫に趣味を極めてもらう

 

下重さんの夫は、10年ほど前から鎌倉でお茶を習っている。家で花も生けはじめた。

 

「花は誰かに習うのではなく、創作で。器はあらゆるものを活用し、つれあいにこんなに美的センスがあると、最近になって気付きました。特に男性は、凝り始めると極めようとするので勉強熱心ですし、夢中になる姿は、なかなかいい。お茶もおいしく飲めるし、花があれば家中が華やぎます。つれあいが語るうんちくは、私も勉強になりますから、もっといろいろと楽しんでほしいですね」

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