緊急事態宣言は解除されたものの、“第2波”“第3波”への不安はぬぐえない状況。外出時においてマスク着用は、しばらく“マスト”になることが予想される。
しかし、もうすぐ夏本番。炎天下なのにマスクをつけるのは不快に思う人も多いだろう。オーガニックコットンや絹、冷感素材など、通気性や速乾性に優れた素材で作られた“夏マスク”も、続々と発売されている。いったい、どれを選べばよいのだろうか……。
「生地によって個体差はあるものの、結論から言えば、“夏マスク”のような通気性を重視したマスクで、ウイルスを含む飛沫の侵入を防ぐことはほぼできません。感染対策だけを考えると、やはり“不織布マスク”を使うことが望ましいです」
そう話すのは『マスクの品格』(幻冬舎)の著者で、環境疫学・公衆衛生学を専門とする聖路加国際大学准教授・大西一成さん。その理由を、こう話す。
「大前提として、マスクをつける意味は『ウイルスを含んだ飛沫を飛ばさないこと』、そして『取り込まないこと』。文字どおり繊維を織らずに、熱を加えて素材を変化させ、布状にしたのが不織布マスク。生地に隙間が少なく、飛沫を通しにくい。いっぽうで、織った布(布マスクなど)は、格子状に隙間があるうえ顔にフィットしにくいので、正面からも横からも飛沫が漏れやすいんです」
これら2つを満たすには、フィルターの捕集効果が高く、かつ顔にフィットするマスクを選ぶ必要がある。
「残念ながら、通気性重視の布マスクはフィルターの捕集効果を十分に発揮しているとはいえません。たとえば、“アベノマスク”の格子の目の大きさは、150〜500マイクロメートル。飛沫はそれよりうんと小さい0.1マイクロメートル以上とされています。正しい着用方法で不織布のマスクを付けた場合、不織布の性能や顔の骨格に左右されますが、平均して6割、高い人で8割ほど飛沫の吸い込みを防ぐことが私の調査でわかっています」
つまり、布マスクの通気性は飛沫感染対策とは相反するもの。とはいえ、顔を触らないようにする、乾燥からのどを守るという点は「布マスクも一定の効果がある」と大西さん。“夏のマスク生活”の苦しさを解消するには、マスクを使い分けることが大事だという。
「ポイントは、いま自分がいる場所が、感染リスクの高い場所なのか、それとも熱中症リスクの高い場所なのかを、まず把握すること。たとえば、人がほとんどいない炎天下の公園で運動するときにマスクをつける必要はないでしょう。屋外では、人との距離を意識しつつ通気性のよい布マスクをつける、電車など人の多い場所では不織布マスクを正しくつけるなどして、使い分けましょう」
さまざまな性能をうたうマスクが発売されている昨今。自分の肌と体のために、正しい使い方を知って、使い分けていこう。
「女性自身」2020年6月23・30日合併号 掲載