加藤綾菜が向き合った志村けんさんの死「限りある命」痛感

長年連れ添い、紆余曲折を経ながら、最後は「夫を介護する」という試練と向き合うことになった妻たち。そのとき、夫に何を思うのか。きれいごとだけでは片づけられない複雑な思いを超え、見えてきた「夫婦って何?」の答えに、耳を傾けましたーー。

 

■加藤綾菜さん(32・タレント)/夫は加藤茶(77)

 

「これから先、彼に何があっても動じることなく、私がサポートしたいと思いました」

 

そう語るのは、加藤茶夫人として自然体で夫に尽くす姿が共感を呼ぶ加藤綾菜さん。綾菜さんは短期大学進学時に広島から上京。’09年、六本木の割烹料理店でアルバイトをしていた19歳のとき、来店した茶さんに気に入られ、交際を経て’11年6月に入籍。

 

「世間の反応を覚悟のうえで、責任を感じて入籍してくれた彼には感謝しています」というが、結婚当初は45歳年下というだけで綾菜さんへの風当たりは相当なものだった。そんなさなかの’15年、茶さんは『鶴瓶の家族に乾杯』(NHK総合)のロケの夜に倒れ、そのまま入院、闘病生活を余儀なくされる。診断結果はパーキンソン症候群という大病。しかし、手が震え、スプーンもまともに持てなかったという茶さんに、献身的に寄り添い、看病する綾菜さんの姿が報じられると、世間の目は次第に変化していった。

 

「あのころは絶対に彼を死なせたくないという使命感に燃えていました。主治医の先生からは『回復は難しいでしょう』といわれましたが、結婚して数年しかたっていないのに、という思いがありましたし、生命の力を信じる心が強かったんです。『彼の大好きな仕事に復帰して舞台に立ってほしい』と、そればかり願っていました」

 

この後、茶さんは奇跡的に回復、舞台にも復帰を果たした。

 

「退院時に『1年後、舞台に立とうね』という目標を立て、『今日は5分歩けたから、明日は6分を目指そう』とか、地道なリハビリに励みました」

 

復帰を果たしたものの、茶さんの年齢を考えると、いつ何があるかわからない。そう考えた綾菜さんは、ついに昨年から実践的な介護の知識を得ようと専門学校へ入学。130時間の研修を受け、この5月には幅広い分野でヘルパーができる介護職員初任者研修の筆記試験に合格した。

 

合格を報告すると、茶さんも「とても安心だよ。ありがとう」と喜んでくれた。現在、介護福祉士を目指してさらに研鑽を積む日々を送っている綾菜さん。学ぶほどに介護の奥深さを痛感するという。

 

「生半可な世界ではありません。学ぶことと、現場で実践するのでは大違いでした。重度の認知症の方は歯磨きの介助で口を開けていただくことも容易ではない。介護の本当の大変さをまだ私は理解していない。そう感じてどこかの施設で職員として働きたいと願っていたら、受け入れていただける先があったんですよ」

 

そう目を輝かせる綾菜さんだが、7月に入職できるはずが、コロナ禍で延期に。それまでの間に大学の通信教育も開始したが、茶さんの食事作りを怠らない綾菜さんの一日は、それだけで十分忙しい。

 

「出かけるときに彼の食事を冷蔵庫に入れるのはダメなんです。彼は『お皿がいっぱいあって、どれを食べたらいいかわからなかった』と食べずに過ごしてしまう。だから作ったらキッチンに置いて、保冷剤をたくさん載せて。お皿はそのまま置いておいてもらえばどれだけ減ったかわかります」

 

綾菜さんにとって介護の修業も大事だが、あくまで“加トちゃんファースト”がモットー。この気持ちが強くなった要因には、志村けんさんの急逝もあった。「命には限りがある。一緒に過ごせる時間の大切さ」を痛感したという。

 

「彼は当初、とても落ち込んでご飯も食べられない状態でした。最近は少し元気を取り戻して、ご飯も1膳ぐらいなら食べられるようになったので、彼が生きていられるだけでありがたいと思うようになりました。結婚当初は彼が女の人とラインをしていることにヤキモチやいたり喧嘩したりしたけど、いまは朝、笑顔で『おはよう』っていえることがうれしい。彼が一日でも長く芸人として舞台に立てるように生活すべてを支えるのが私の役割と思っています」

 

綾菜さんは「ザ・ドリフターズで育った世代」とはいえないが、いまも昼夜ネタ作りに余念のない茶さんを見ているだけでも、そのすごさは伝わってくるそう。

 

「支えがいがあるし、彼を支えられることに感謝ですね」

 

9年間のなかで「子どもがいなくてかわいそう」「悩んでいるんだろうね」などといわれたこともあったが、綾菜さんは夫婦2人きりの幸せを満喫しようと思っている。

 

「どんな夫婦にも悩みごとはあるはずだし、どうしようもないことはあまり悩まないことにしているんです。いまは2人の時間があることに感謝。お互いを思いやって残りの人生を一緒に過ごすことが、ただひとつの願いですね」

 

「女性自身」2020年9月15日 掲載

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