「定年=老後」と考える時代はもう終わり。現代の60歳はまだ若く、少しだけ働きながら、好きなことに時間を費やせる最高の時期です。老後は80歳からでいい。月15万円で豊かに暮らす、60代夫婦のカタチを紹介ーー。
■「5年前、養鶏場にカフェを併設。趣味だったコーヒーと、物々交換で手に入れた食材をメニューにして」齋藤博さん(66)、直子さん(65)
養鶏業を営んでいる齋藤さん夫妻が、敷地内にカフェをオープンしたのは5年前。
「これから先、だんだん体力が落ちていくことを考えると、養鶏だけじゃなく、ほかにも何かせなあかんな、と思ったのがきっかけでした」と、直子さん。
カフェを併設するにあたり、養鶏業は縮小。現在は、150羽のニワトリを平飼い、ときどき放し飼いで育てている。飼料は健康を考えた自家配合で、卵は有精卵。直売所で販売するほか、近所にある牧場で物々交換したり、もちろんカフェでも使用している。
そもそも、「安心して食べられるものをつくりたい」と、夫妻が大阪からここ、千葉いすみ市に移住したのは20代のころ。移住者の多いいすみ市でも先駆者的な存在で、今では土地の人と移住者をつなぐ存在だ。カフェは、そんな人々の憩いの場にもなっている。
「以前からいろんな人が遊びに来ていたので、いっそカフェにしたらいいんじゃないか、と思ったのも理由のひとつでした。計画したのは15年前ですが、設計から施工まですべて自分でやったので、けっこう時間がかかってしまって。まだまだ“カフェごっこ”のような感じです」とは、博さん。
じつはカフェだけでなく、自宅も鶏舎も「モノづくりが大好き」という博さんの自作なのだ。
「素人ですから時間はかかりますが、着実に上達していて、次はこんなふうにしよう、と考えるのも楽しいですね。カフェも思い描いた感じの空間に仕上がりました。自作したり、もらったり、拾ったりといろいろですが、好きなものばかりが詰まっています」
メニューも同様だ。コーヒー、ココア、チャイ、ハーブティー、ピザ、オムレツと、好きでこだわっているもの、得意なもの。そして、自宅でとれた卵や野菜、物々交換した乳製品をふんだんに使用し、安心して食べられるものを届けたい、という思いも生きている。
気になる家計のことを博さんに尋ねてみた。
「メインの収入は養鶏です。あとは、少しずつですがカフェの収入と年金。畑もやっていますし。トイレは循環させるなど工夫が必要ですが、そのぶん土地の賃料はリーズナブル。もともと生活費のためというより、やりたいことのために働いている感覚なので、月15万円もかからず楽しく暮らしています。そうそう、最近、楽しみがまたひとつ。日本みつばちが来てくれるようになったんです。来年あたり、ハチミツがとれるんじゃないかな、と期待しているんですよ」
「女性自身」2020年11月10日号 掲載