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年を重ね、身体機能や認知機能が衰えることにより、ゴミ出しができず、家にため込んでしまう。そんな“ゴミ出しができない高齢者”が問題になっている。

 

環境省は’19年にゴミ出し支援に関する全国調査を実施。回答を得た1,648市区町村のうち、ゴミ出し支援を行っているのは23.5%だった。回答した自治体の87.1%が「高齢化でゴミ出し困難な住民が増える」と危機感を抱く。

 

60代のA子さんは、半年ぶりに帰省した際の経験をこう語る。

 

「当時83歳の母は、山梨県で一人暮らし。電話はよくしていましたが、いつも『元気。大丈夫』というだけ。ところが、実家を訪れたらゴミだらけ。掃除もできておらず、部屋をネズミが走り回っていました……。母は腰痛がひどく、何カ月もゴミが出せていなかったのです」

 

50代主婦のB子さんも同様の経験を語る。

 

「昨年母が亡くなり、80歳の父が一人暮らしに。3カ月ぶりに父の元を訪れると奥の和室にゴミ袋の山が! 父は母に家事をまかせっきりだったので、ゴミ出しをしたことがありませんでした。そのため分別がうまくできず、『出し方が違う!』と、近所の人が玄関前にゴミ袋を戻しに来たんだそう。それからゴミ出しが怖くなり、できなくなってしまったのです」

 

このようにゴミが出せない、という状況には誰もが陥りうると語るのは『ルポ ゴミ屋敷に棲む人々』(幻冬舎)の著者で、公衆衛生看護学の専門家・岸恵美子東邦大学大学院(看護学研究科)教授だ。

 

「高齢になると、誰もがこれまで普通にできていたことができなくなります。ゴミ出しもその1つ。特に、地域のゴミ置き場までゴミを出しに行く『ステーション回収』は、高齢者にとっては負担が大きい。何とか歩くことはできても、片手に重いゴミ袋を持って置き場まで歩くのは無理という高齢者も多いのです。また、ふだんはなんとか出せていても、雨や雪ではゴミを出せずため込んでしまう、というケースも。近所の人や子どもに頼めば、と思うかもしれませんが、ゴミ出しは買い物と違って頼みにくいと感じる人が多数です。さらに、認知機能が衰えてくるとゴミの分別が難しくなります。分別ができないことで隣人とトラブルになり、ゴミが出せなくなる人も。その状態が続けば、当然いつかはゴミ屋敷になります」

 

本誌では、岸先生監修の下、ゴミ出し困難に陥る危険性のある世帯数を試算した。

 

世帯主が75歳以上で、高齢者自らゴミ出しを行わなければならない、単身世帯、夫婦のみ世帯の数は、’25年には約858万世帯となる(国立社会保障・人口問題研究所’18年『日本の世帯数の将来推計』より)。75歳以上で、要支援の認定を受けた人、要介護認定を受けた人の合計割合は31.9%(令和2年版高齢社会白書より)。

 

つまり、’25年には858万世帯の31.9%である約274万世帯でゴミ出し困難になると予想される。また、この数字を全世帯において換算すると、全国で19.6世帯に1世帯が、ゴミ出し困難に陥るリスクを抱えるという結果となった。

 

「女性自身」2020年12月15日号 掲載

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