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東京・上野動物園の人気者といえば、上野生まれのジャイアントパンダ、メスのシャンシャン(3)。12月末予定の中国への返還が、今月10日、来年5月末まで延期になったことでもニュースになった。

 

「やはりという思いです。返還前には必ず検疫期間がありますが、シャンシャンは検疫に入る様子もなく、通常どおりの展示が続き、12月になっても返還日の発表がなかった。パンダファンの間では『シャンシャン、帰る気配ないよね』と、ささやかれていたんです」

 

と、話すのは、1年365日、上野動物園に通ってパンダを撮影し、ブログに掲載している「毎日パンダ」の管理人・高氏貴博さん(42)だ。

 

「延期発表翌日のパンダ舎前は、その話題でもちきりでしたよ」

 

同時に、来年2月が返還期限だったシャンシャンの両親、リーリー(オス・15)とシンシン(メス・15)の返還も5年、延長された。新型コロナウイルスの感染拡大で、パンダの輸送時に同行する専門スタッフの渡航が難しいと判断されたためだった。

 

コロナ禍の現在、動物園への入園も事前予約制。入園できる人数が限られているにもかかわらず、シャンシャンがいる東園パンダ舎前には連日、行列ができる。

 

「今でも長いときは2時間、並びますよ。入場整理券の入手も困難で、土日祝の整理券は受け付け開始の1時間後にはなくなってしまいますから」(高氏さん)

 

17年6月12日、リーリーとシンシンの第2子として誕生したシャンシャン。同年12月19日からの一般公開を前に、観覧希望の応募総数は25万件! 公開後初の祝日だった23日の観覧当選確率は、144倍まで膨れ上がった。

 

ぬいぐるみ、Tシャツ、帽子など、公開記念グッズが飛ぶように売れ、上野の街はシャンシャン特需で盛り上がったものだった。

 

丸まっこい体、まだ短かった手足で不器用に木によじ登り、転がり、竹にかじりつくおてんばさんの姿は多くの人を魅了する。147g、体長14.3cmで生まれたシャンシャンは、初公開時で12kg、現在76.4kg(5日測定)と、スクスク大きく育ったが、その愛らしさは変わらない。

 

今回の返還延期で、このかわいい姿がまだ、しばらく見られる。パンダファンは、さぞ大喜びだろうと思ったが、高氏さんは複雑な表情を浮かべていた。

 

「個人的な思いとしては、1日でも長く日本にいてほしいという気持ちはあります。その一方で、シャンシャンのことを思うと、1日でも早く中国に帰ってほしいと。日本にいたらできないことがたくさんあるんです。特に、大事なのがパートナー探し。このまま日本にいて、お婿さん候補のオスパンダが1頭やってきても、相性が合うかどうかわからない。

 

中国に行けば、お婿さん候補はたくさんいます。中国でいちばん相性の合うお婿さんを見つけて、新しい家族を作ることが、シャンシャンにとっていちばん幸せなことだと思いますから」

 

上野動物園の元園長で、日本パンダ保護協会の会長である土居利光さんもこう話す。

 

「シャンシャンは、次の世代のよい子どもを作るため、パンダ本来の生活の基礎を作るために、中国に戻るんです。中国は日本と違って、たくさんパンダがいますから、たぶんシャンシャンも大丈夫。よいパートナーが見つかりますよ」

 

野生のパンダは現在、1,864頭。飼育下のパンダは、飼育方法が確立してきて寿命が延び、増えてもいるが、それでも多くはないという。

 

「そんななかで、シャンシャンは若いパンダなので、次の世代を担っていく。将来的には自然保護区みたいなものを充実させて、パンダが自然の状況に戻っていけるといいなと思うんです。シャンシャンが中国に戻って、話題になって、パンダは大事にしようねっていう雰囲気になって、パンダのための自然保護区を充実するとなったら、それは、パンダの周りの動物も守ることになるんです。自然保護区は人間と動物の関係を考えようという試みです。シャンシャンの存在が、そういった話題や気持ちのきっかけになってくれたらと思います。『シャンシャン、これからですよ。自分の新しい環境で頑張ってね』と、言いたいですね」

 

かわいいだけじゃない。シャンシャンの丸っこい肩には、パンダの、そして自然界の未来がかかっている――。

 

「女性自身」2021年1月5日・12日合併号 掲載

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