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老親との別れは誰にとってもつらいものだが、きちんと相続対策をしておかないと、悲しみにひたっていられる時間なんてない。身近なきょうだい同士で骨肉の争いにならないよう今から備えよう! そこで、読者世代が陥りやすい“争続”トラブルを紹介。具体的な対処法を相続問題に詳しい行政書士の竹内豊さんに聞いた。

 

【ケース】同居している母の財産を使い込んでいたと疑われた

 

長い間、母と同居しながら介護をしてきた長女は、母のお金の管理もまかされていた。

 

母が他界した後、法定相続分のとおりに遺産を分けようと思ったら、離れて暮らす2人のきょうだいが、「通帳の残高が減っているのは、姉さんがお小遣いとしてもらっていたからでは?」と疑われてしまった。

 

さらには「この相続財産をもとに遺産を分けるのは不公平だ。姉さんが使った分を引いてから計算してくれ」と言いはじめ……。

 

【対策】親のために使ったお金はぜんぶレシートをとっておく

 

親の介護を何も手伝わなかったのに、亡くなった後になって、あれこれ口出しをしてくるきょうだいは意外と多い。

 

このケースでは、同居しながら母の介護をしていた長女が、金銭管理をしていたことから、「使い込んだ」と疑いをかけられた。

 

「お母さんの預貯金の使途不明金を実証するためには、介護がスタートしてからの通帳がポイントになります。使途不明金があれば、それはお母さんのために使ったのかどうかが判断の分かれ目。自分の欲しいものを買うための費用にあてたりしていたのであれば、そのお金は『特別受益』として相続財産に含まれることがあります」(竹内さん・以下同)

 

たとえば、600万円の相続財産を3人の相続人(きょうだい)で分けると、法定相続額は1人200万円となる。

 

このケースで、すでに長女が60万円を母の口座から引き出して、自分のために使っていたとすると、相続財産は660万円とみなされ、法定相続額は1人220万円に増える。逆に、長女は特別受益として60万円を事前に受け取っていたことになるので、母の死後に受け取る金額は160万円となってしまう。

 

「このようなトラブルを避けるためにも、お母さんの介護をしているときは、帳簿をつけておくといいでしょう。介護費や医療費、薬代、おむつ代、お母さんが使うために買ったものはすべてレシートをとっておくこと。介護していない人たちにお金の話を持ち出されるとカチンとくるでしょうが、帳簿があれば冷静に反論できます」

 

たとえ「自分へのごほうびで買ったもの」があったとしても、「こんなに大変なことがあった」などと、介護の大変さを伝えれば、一定の理解はしてもらえるだろう。要は、きょうだいの間での日ごろのコミュニケーション不足がトラブルの種となるのだ。母の健康状態や、抱えている問題など、離れて暮らしているからこそ、伝えておく必要がある。

 

ただし、なかには親の介護をしている人が、お金の管理がずさんすぎて、「何に使ったのかわからなくなった」というケースも。

 

「亡くなった時点での残高はわかっても、過去の通帳を紛失してしまい、何のためにお金を使ったのかがわからない、ということもあるでしょう。そんなときは、母の口座がある金融機関に出向いて、過去にさかのぼって取引明細を発行してもらうこともできます」

 

お金の管理がずさんなために、せっかく親の面倒を見ても感謝されないなんてもったいない。

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