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金が高騰している。3月7日に1グラム8,000円を超え、3月25日に8,500円の史上最高値をつけた(田中貴金属工業)。コロナ流行以前の3年前(4,600円台)の約1.8倍、もっとも安かった’99年ごろ(1,000円台)の約8倍だ。そんな金の値上がりについて、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれた――。

 

■短期で利益が出ることは少ない

 

背景にあるのはロシアの軍事侵攻。戦争などで政情不安になると“有事の金”が注目されるのです。

 

というのも、金はかなり希少です。採掘が始まったのは6000年も前。それでも総採掘量はオリンピック競技用プールの約4杯分、約19万トン。最近はスマホなどの基板にも欠かせないので需要も多い。

 

さらに、金の相場は世界共通、どこでも換金できます。戦争などで国を追われる人が、自国の通貨が紙くずになるのを恐れて、換金性の高い金を持って逃げるのです。

 

金高騰のいま、自宅にある金の宝飾品などを売るには絶好のタイミングです。壊れていてもゆがんでいても問題ありません。なかには細かい細工などにプレミアムがつき買取り価格が上乗せされるケースもありますが、基本的には金の含有量で買取り価格が決まります。

 

いっぽう、「これほど価値が上がるなら買いたい」という方もいるでしょう。金を財産として手元に置く方法は2つあります。

 

1つ目は金地金、いわゆる“金ののべ棒”を買うもの。5グラム~1キログラムまであり、料金はその日の店頭小売り価格×重量に手数料がかかります。手数料は重量により、購入時は4,400~1万6,500円、売却時にも2,200~1万6,500円と無視できない金額です。

 

また、売値と買値の差が1グラム100円ほどあるので、100グラムののべ棒だとその差額が1万円程度。金の価格が1グラム100円上がっても、値上がり益は相殺されてしまいます。そのうえ手数料が購入・売却時にそれぞれ1万6,500円かかるので3万3,000円のマイナスです。

 

しかも、銀行預金の利息や株の配当のように、所持すればもらえるものがありません。さらに、預けるにも保管料が必要です。

 

つまり、金は短期間の売買でもうかるものではなく、「孫に残す」など長い目で考えるものなのです。

 

2つ目の買い方は金貨です。金貨にはメイプルリーフ金貨のような純金金貨と、記念金貨があります。どちらも手数料込み、税込み価格で、純金金貨の売値は買値より1割程度安く設定され、これも短期的な資産運用には不向きでしょう。また、記念金貨は人気があればプレミアム価格がつくことも。

 

ほかにも金価格と連動した投資信託「金ETF」や、「純金積立」などの金融商品があります。これらは1万円程度からと手ごろですが、金そのものを買うわけではありません。なかには、ある程度たまると金地金に換えられる会社も。

 

これらも注意すべきは手数料です。特に純金積立は、手数料も毎月かかりバカになりません。

 

金も金融商品も、手数料を含めた運用効率をよく考えましょう。

 

【PROFILE】

荻原博子

身近な視点からお金について解説してくれる経済ジャーナリスト。著書に『「コツコツ投資」が貯金を食いつぶす』(大和書房)、『50代で決める!最強の「お金」戦略』(NHK出版)などがある

経済ジャーナリスト

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