主犯格の渡辺優樹容疑者【左】と小島智信容疑者【右】(写真:アフロ) 画像を見る

「闇バイト」として募った実行役を組織し、住人を殺傷して金品を奪う一連の広域連続強盗事件で、「ルフィ」を名乗る指示役と見られる渡辺優樹容疑者らが2月9日フィリピンから強制送還された。

 

渡辺容疑者は、被害総額60億円以上といわれる特殊詐欺のほか、東京都狛江市で90歳の大塩衣与さんが殺害された強盗殺人をはじめ、’21年から五十数件の強盗や窃盗への関与が指摘されている。強盗の犯行は、東京、茨城、群馬などの14都府県に及ぶという。

 

これほど広域で事件が起きると「うちの町は大丈夫だろうか」と不安に思う人が多いだろう。

 

「実は、地域の特色によって強盗犯や空き巣に狙われやすいケースがあるのです」

 

そう語るのは元神奈川県警の刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平さんだ。

 

そこで、警察庁の「犯罪統計」を基に、ルフィらのように住居へ押し込み金品を強奪する「侵入強盗」とコンビニ強盗なども含む「強盗」全般、留守宅を狙う「空き巣」、中高年女性が狙われやすい「ひったくり」について、都道府県別に人口1万人当たりの認知件数を算出し、ランキング表を作成した。

 

「闇バイト強盗」に狙われやすい地域は? 都道府県別治安ワーストランキング
画像を見る 【解説】人口1万人当たりの犯罪発生率ワーストランキング

 

強盗とひったくりのワースト1は大阪府、侵入強盗と空き巣のワースト1は茨城県で、いずれの上位も都市部やその近郊が多いことがわかる。

 

「強盗は商店の多い大阪や東京などの都市部に多いです。一方で空き巣は住宅地に集中するので大都市の郊外で頻発しています。空き巣の認知件数は埼玉県、千葉県が多く、以前から変わりません。さらに、空き巣のつもりが住人と鉢合わせて暴行に及び、強盗に発展するケースもあります」(小川さん)

 

大都市の郊外は住宅地が広がり、空き巣や強盗に狙われやすいのだ。

 

さらに、より確実に狙うために強盗の傾向に変化が起きていると犯罪学が専門で立正大学教授の小宮信夫先生は言う。

 

「かつて住宅街に横行した空き巣は、今では当たり外れがあってコスパが悪いと犯人らは考える。今は事前に情報収集を行い、確実にお金のあるところを狙う『ピンポイント強盗』が増えています」

 

ルフィらが行った闇バイト強盗もピンポイント強盗に分類できる。

 

「ほかにも、震災アンケートなどを装って電話をかけ、高齢者だけの住まいで、タンス預金があることを突き止めてから犯行に及ぶ強盗が増えています」(小川さん)

 

大都市の郊外など住宅地が多いところに多発している空き巣や侵入強盗だが、このような「ピンポイント強盗」が横行すると、大都市から遠い小さな町でも安心はできない。

 

「そのような地域のほうが、人間関係が濃密でうわさが漏れやすい。また地元愛もあって今も名簿を作ることが多く、扱いも厳格とはいいがたいでしょう。犯人らが求める情報を、集めやすいのはそんな地域です。今すでにその兆候が見えてきましたが、今後はもっと明らかに犯行が増えていくでしょう」(小宮先生)

 

では、女性が路上で狙われがちなひったくりは?

 

「自転車を使った犯行が多いので、大阪のように坂道が少なく自転車で逃げやすい地域でよく起きます」(小川さん)

 

ワースト県に入っていないからといって安心できないとすると、私たちはどうすればいい?

 

「まずは、個人情報を与えないこと。お金の話をむやみにせず、名簿は厳重に管理して。犯人らが家を見張りやすい場所が周囲にないことも重要です」(小宮先生)

 

小川さんはつぎのように語る。

 

「家にお金を置かないことです。電話でじょうずに聞き出されると、正直に話してしまう人が多い。お金が家になければ、『ない』と言えるでしょう」

 

侵入強盗・空き巣は、東京都や大阪府などの大都市よりも、その周囲の住宅街が狙われやすい。身を守るために、まずは戸締まりを。

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