「贈呈品選定の理由は、ゼレンスキー大統領および、ウクライナ国民への激励と、それに加えて、平和を祈念する思いを伝達するためのものでありますーー」
3月21日、戦地ウクライナを電撃訪問した岸田文雄首相。その際、ゼレンスキー大統領に手みやげとして贈呈した広島名物“必勝しゃもじ”が、帰国後に物議を醸した。後日、岸田首相は参議院本会議で冒頭のように語ったが、必勝しゃもじに「敵を召し(飯)取る」との意味があることから、平和国家をうたう日本の首相の手みやげとしては、あまりにも不適切だと、野党から批判を浴びたのだ。
状況や品物の特性によっては、よかれと思って贈ったみやげでも、相手を困らせてしまう可能性がある。だが、じつはこれって、私たちもついやりがちな“手みやげ選びのタブーあるある”なのだ。
「手みやげ選びには、事前のリサーチがとても大事です。相手の好みがわかっていれば、それに沿って選ぶに越したことはありません。とはいえ、購入前にリサーチできないケースも多々あります。そういう場合は、失敗しない手みやげ選びのポイントを押さえておくといいでしょう」
こう語るのは、「マナースクール ライビウム」代表の諏内えみさん。友人、知人、仕事相手など物を贈る相手、またホームパーティ、引越し祝いなどシチュエーションによっても、手みやげの内容は変わってくる。コロナ禍の制限緩和で知人を訪ねる機会も増えるなか、おさえておきた手みやげマナーを、諏内さんに解説してもらった。
まずは、知識として覚えておきたいNGアイテムを頭に入れておこう。
「目上の人に贈り物としてお渡ししてはいけないものがあります。ペンや手帳など文具類は“もっと仕事や勉強に励みなさい”、スリッパや靴下などの履物は“相手を踏みつける”ことから、どちらも“下に見ている”と捉えられることもあります。また、ナイフなど刃物は“縁を切る”、ハンカチの漢字『手巾』は手切れとも読むため“相手との絶縁や絶交”の意味がある、と言われているので気になさる方も」(諏内さん、以下同)
引越し祝いで贈り物をするシーンも注意が必要。
「ここでは“赤色のもの”や、ホットプレート、電気ポットなど“火を連想させるもの”はお祝いとして贈るのはNGとされています。ただし、事前のリサーチで、相手がこれらのアイテムを欲しがっていることを確認している場合はまったく問題ありません」
次は、悩むことが多い、友人、親戚などに渡すプレゼントで気をつけるべきこと。その後何度も会う可能性が高いので、できるだけ身に着けるものは避けたほうが無難だという。
「たとえば、スカーフなどの手みやげは、相手の好みではない色やデザインのものを渡してしまう恐れがあります。その場合、相手が礼儀として感謝していても、内心はそう思っていないことも。後日その人と会うときに、『そのスカーフを使っていないと“気に入らなかったのね”と、思われたらどうしよう……』などと、気を使わせてしまいます。香水やコロンといった、好みがわかれるものも同様です」
避けたいタブーは、訪問先の近所で手みやげを買うこと。
「直前まで『何も考えていなかった』『間に合わせで買ってきた』と感じさせてしまいます。 特別感やありがたみを感じないし、自分は軽んじられているという印象を与え、手みやげが逆効果となってしまう可能性も」
食べ物の場合、生もの、冷凍ものは注意が必要とも。
「生ものは衛生面の問題があります。海産物の場合、エビや貝類などはアレルギーをお持ちの方もいるので、リサーチできていない場合は適切とは言えません。冷凍食品は、保存場所に困るケースがあるので、あまりおすすめはできません。やはり、日持ちのする焼き菓子など常温でも保存できるものがベター。賞味期限が迫っているものは避け、個包装で小分けになったものを選ぶと間違いありません」
諏内さんによると、手みやげは基本的に、食べたり、使ったりして“消えてなくなるもの”がいいそうだ。
「調味料なら有機栽培で作られたオリーブオイル。グッズであればハイブランドのせっけん、といった、ふだん自分では買いにくいちょっと高級感のある商品は喜ばれます」
思わぬ誤解を与えてしまわないためにも、手みやげ選びが独りよがりにならないようご注意を。