【1】まず話を聞き、気分転換させる
「家族が突然、徘徊を始めると、ショックのあまり怒ったり監視を強めたりしがちです。しかし、それは本人の不安を強めてしまい、かえって逆効果です」
と指摘するのは認知症の人と家族の会の副代表理事・花俣ふみ代さんだ。
「徘徊には、〈以前の家に帰りたい〉〈会社に行こうとしている〉など、本人なりの理由があります。まずは、理由を聞き寄り添ってあげることが大事です」(花俣さん)
さらに、時間に余裕があるときには、「本人が歩きたい場所をいっしょに散歩する」「家事を手伝ってもらう」など、適度に体を動かしつつ気分転換を図るのも、徘徊を防ぐのに有効だそう。
【2】鍵を二重にしておく
玄関ドアから、すんなり外に出られない工夫も大切だ。
「赤外線センサーで人を感知し、ブザーなどで知らせるチャイムをドア付近に設置したり、鍵を2つ付けておくだけでも徘徊を防げる確率は上がります。認知症の方にとって2つ同時に鍵を開けることは難しいからです」(朝田さん)
【3】近所に協力を求めておく
ただし、あらゆる工夫をしていても、「目を離した一瞬の隙に出ていってしまうこともある」と花俣さん。そんな場合に備えて“安心して徘徊できるご近所づくり”をしておくことが大事だという。
「具体的には、前もってご近所さんや近くの警察署に〈家族に認知症患者がいる〉ことを伝えておくこと。そうすれば、徘徊しているのを見つけた人が知らせてくれる可能性が高まります」(花俣さん)
【4】自治体のSOSネットワークに登録する
徘徊などで行方不明になったときに、警察のみならず、地元の支援団体や商店などが協力し、迅速に捜索するネットワークを構築している自治体も多い。そうしたところに事前登録しておくのもよいという。
【5】靴などにGPSを付ける
グッズの力も借りてみよう。
「おすすめは、徘徊しても居場所がわかるGPSを身に着けさせること。靴に付けるタイプや携帯に付けるものなどさまざまな種類があります。“これはお守りだよ”と袋に入れて常に首から下げてもらうようにしたり、その方が日ごろ持ち歩いているものなどに付けておきましょう。貸し出しをしている自治体もあります」(朝田さん)
【6】全身写真を撮っておく
いなくなったことに気づいたら、すぐに近所の警察署に届け出をしよう。警察や近所の人に知らせる際、役立つのが本人の写真だが、撮り方にひと工夫が必要だ。
「顔だけでなく、靴まで含めた全身の写真を撮っておくこと。見知らぬ人が見てもピンとくるように、背中や腰が曲がっているとか、ご本人の特徴がわかるような写真を見せることで、見つけてもらいやすくなります」(朝田さん)
【7】靴に名前・連絡先を書いておく
せっかく保護されたのに「身元がわからない」ということにならないための備えもしておきたい。
「名前は言えても、住所がわからないという認知症の方は多いです。いつも履いている靴や、持ち歩いているカバン、携帯などに名前と緊急時の連絡先を書いておきましょう」(朝田さん)
上着などと違い、靴は決まったものを履くことが多いため、まずは靴に記入するのがおすすめだ。
突然起こることが多い徘徊だが、朝田さんによると、外へ出たそうに出口をうかがったりするのは、前兆の場合があるという。より注意して見守ろう。
度重なる徘徊の不安に家族は疲れてしまいそうになるが、朝田さんによると「徘徊する期間はだいたい半年程度で終わる」という。
加えて花俣さんは、「私たち一人ひとりが、徘徊している高齢者に気づくことも重要です」と話す。
「迷っている認知症高齢者を見分けるポイントは、〈険しい表情やボーっとした顔をしてコンビニなどの前に立っている〉や〈季節はずれの服装をしている〉〈脇目もふらずに歩いている〉などがあります。おかしいな、と思ったら声かけする勇気を持ちましょう」
親の命を守るには、日ごろの備えと、助け合いの精神が必要だ。