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「(第3号被保険者制度の廃止を盛り込んだ)『働き方に中立的な社会保険制度等のあり方に関する連合としての検討の方向性(素案)』についても提起しました」

 

5月18日に行われた日本最大の労働組合の全国中央組織「連合」の定例記者会見で芳野友子会長(57)がこう口火を切った。

 

公的年金制度には、厚生年金に加入する夫の配偶者、いわゆる“サラリーマンの妻”は、一定収入以下なら自分で保険料を支払わなくても基礎年金を受給できる「第3号被保険者制度」がある。この制度については、「優遇されている」「不公平だ」という批判も多い。

 

仮に廃止されるとなると、専業主婦も国民年金保険料を払うことになる。連合の芳野会長の発言について全国紙記者がこう解説する。

 

「記者会見の質疑応答で『第3号の廃止を(連合が)明確に前に出したのは初めてではないか?』との質問も飛び、事務局も否定しませんでした。社会保険料の収入を増やしたい政府から廃止の声が出てくるのはわかります。しかし、制度の恩恵を受けている専業主婦の妻のいるサラリーマンの組合員も多い労働組合から出てくるのは異例のこと。

 

芳野会長は2021年の就任以来、麻生太郎副総裁と会食したり、自民党大会に出席する意向が報じられたりするなど、自民党との距離を縮めています。岸田首相と“共闘”して制度の見直しを画策していると思われてもしかたありません」

 

政府は昨年6月14日に閣議決定した「男女共同参画白書」の中でも、第3号被保険者制度の見直しを提言している。岸田政権と連合の会長がタッグを組んで狙い撃ちする第3号被保険者について「よこはまライフプランニング」代表で社会保険労務士の井内義典さんがこう解説する。

 

「第3号被保険者制度は、専業主婦世帯が主流だった1986年4月に始まった制度です。それまで自営業者向けだった国民年金制度が、全国民共通の保障である基礎年金制度になり、会社員や公務員、その配偶者も国民年金の被保険者になりました。その際、いわゆる“サラリーマンの妻”である被扶養配偶者を第3号被保険者に区分することになったのです」

 

それまでの年金制度では会社員や公務員の配偶者である専業主婦は国民年金への加入義務がなかったのだという。

 

「年金は、サラリーマンの夫だけで、年金受給額も夫婦2人分としてまとめて計算されていました。そのため離婚したり障害を負ったりすると“サラリーマン妻”は無年金になり、たちまち生活に困窮してしまうことが少なくなかったのです」(井内さん)

 

当時は女性の社会進出が難しい時代。男性は家庭を顧みずに働くのが美徳とされ、家事や育児のほとんどを押しつけられた女性は、働きに出ることが困難な時代でもあった。

 

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経済ジャーナリスト

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