今日、ネットで注文すれば明日届く便利な“翌日配送”。
ネット通販大手のAmazonは7月6日、今年中に新たな配送拠点11カ所を国内に設置し、翌日配送可能エリアを拡大すると発表した。
便利になるのはよいが、すぐ必要ではないものまで安易に“翌日配送”に指定してはいないだろうか。また、時間指定しているのに、うっかり忘れて外出してはいないか。
現場の配達員たちは、そうした身勝手なユーザーに奔走されているのが現状だ。
「Amazonの場合ですと、AIが1日の配達ノルマを決めていて、1人の配達員が1日に配達する荷物数は200~220個にも及びます。
当然、8時間の労働時間内では配送しきれませんので、12~13時間の長時間労働を強いられている配送員も少なくありません」
そう話すのは、建交労軽貨物ユニオンの高橋英晴代表だ。
「コロナ禍以降、宅配需要が急増して配達員が不足したことから、補償もなく、こうした過酷な条件で働かされているフリーランスの配達員が全体の約半数を占めています」(髙橋さん)
そのうえ、顧客から不条理なクレームも多いという。
「時間指定に遅れてクレームを受けるのは仕方ないですが、逆に少しでも指定時間より早く配達した場合でも《なぜ早く配達するんだ》とお叱りを受けることがあります。
また、お客さま自身が置き配を指定しているにもかかわらず、勘違いからか《勝手に置くな!》とクレームが入ることもあるんです」
そのほか“箱”にこだわっている、こんな顧客も……。
「“Amazon”のロゴ入りの箱に価値を置いている方もいて、少しでも箱が傷ついたり角がへこんでいたりすると、『この箱が欲しいから注文したんだ!』とばかりに、激怒されたという話も聞きます」
一方、こうした不条理にぶち切れる配達員もいる。
《時間指定しとるなら家におれや》
昨年、そう書かれた不在票がTwitterにアップされて問題になった。
再三、指定された時間帯に再配達しているのに、顧客が留守だったため配達員が書いたのだ。
「自分で指定しているのにもかかわらず、不在にしている顧客も多い」と髙橋さんは指摘する。
もちろん、こうした暴言は許されないが、1日200件以上の配達ノルマを、日々こなさなければならない配達員にしてみれば、たまったものではないだろう。
「今年10月から、実質、個人事業主の増税になる“インボイス制度”が始まりますし、そうなればフリーランスで配送を請け負っている人たちが、どんどん辞めていくことが考えられます。そうなると、ますます配達員が人手不足に。今後は、今日注文したら明日届くという現状のような話はなくなるかもしれません」(髙橋さん)
本当に急いでいる場合はともかく、顧客側も、こうした配達員の過酷な現状を踏まえて、「明日必要なものか」を見極めて注文するのが望ましいのではないだろうか。