■話を聞いてくれるのが「よい医師」とは限らない
まず、冒頭の神戸市の事例のような告知忘れは、医師の怠慢にも見える。
「医師の仕事は膨大で、処理能力が求められます。患者への伝え忘れなど、処理能力が低い医師が起こす可能性が高いです。
通常、外来において一人当たり10分も時間をかけてくれる医師を“話を聞いてくれるよい医師”と思いがちですが、処理能力の高い医師は1時間に10人以上の患者を診ることができます。
医師の人間性や相性などは別に、処理能力が高いほど、やるべきことをすぐにやり、やるべきことを忘れたりしないものです。外来の患者のさばき方も見ておくべきでしょう」(上さん、以下同)
告知ミスに関しては、名古屋大学病院でも4月に公表されたケースがある。
前立腺がんの治療のため泌尿器科を受診した患者が、CT検査で肺がんの疑いあったことから放射線医が再検査を推奨したが、泌尿器科医が見過ごし、治療が2年10カ月遅れ、患者が死亡したのだ。
「あくまで一般論ですが、放射線医から“がんの疑いが濃厚”と報告があれば、素早く対応をしますが“がんの疑いが否定できない”程度であれば、放置してしまう医師もいます。それは、医師のなかに他科の医師に診察を依頼するのを嫌がる傾向があるためです。
院長クラスであれば『君、精密検査をお願い』の一言で済みますが、20代、30代のコミュニケーションが苦手な若手医師は、『この書類の書き方がなってないよ』と注意されたりするのが嫌で、他科へ患者さんを紹介するのを敬遠してしまったりするのです」
コミュ障の若手医師は要注意ということだ。
こうした告知ミス同様、前出の東海中央病院の医療事故のように、医師の能力不足も見分けたい。
「肝臓がんの摘出手術のような大きな手術の執刀医は、基本的に主治医の紹介になります。
医師が紹介するのは、大学の先輩後輩などの縁故と、実績のある医師に大別できます。当然、厄介なのは、前者の縁故です」
ホームページなどで医師の実績を調べることも大切なのだ。
「一生に一回受けるような大手術の場合、セカンドオピニオンを受けておくことも重要。逆にセカンドオピニオンに難色を示す医師は要注意です」
病院や医師の技量を示す、もっとも有用なデータは、症例数だという。
「病院ホームページや書籍などでも調べることができます。症例が多ければ医師の技量も上達するものです。逆に少なければ、未熟である可能性があります」