“昭和の実家”の処分に頭を悩ませる人は多い。でも、たとえ田舎でも、ゴミ屋敷でも、なんとかなるかも!? ドタバタの実家じまいを乗り越えた、高殿さんの奮闘劇をとくとご覧あれ!
「兵庫県の西部にある、祖父の代に建てられた父の実家。駅から徒歩20分、庭なし、ガレージなしの築75年の戸建てを自力で売り、『実家じまい』しました」
すがすがしい表情でそう語るのは、作家の高殿円さん(48)だ。ドタバタ実家じまい劇をまとめた著書『私の実家が売れません!』(エクスナレッジ)は、発売後即、重版が決まるほどの大反響だ。
「実家じまいは、まるで“ババ抜き”のようだと思います。親族同士の意見の食い違いに、面倒な手続き……。みんな、厄介なババは引きたくないので、押し付け合いで時間が過ぎていきます。でも私は、あえてババを引きにいくことに、メリットがあると伝えたい。時間がたつほど課題は増えていきます。自分が元気なうちに動くことがとても大切です」
高殿さんが、父の実家じまいに取り組んだのは、コロナ禍の2020年のことだった。
ことの発端は、なんと35年前。高殿さんの父方の祖父が死去したときにさかのぼる。
■思い出の家だから…親族の反対で15年間も放置された家
「3人兄弟の末っ子の父といちばん上の長兄が、実家の戸建てを、真ん中の次兄の伯父は、営んでいた米店の精米所を受け継ぎます。
ところが、次兄が勝手に実家に住み始めて、父も長兄も何も言えないまま、20年近くが過ぎます。そして16年前、住みついていたその次兄が、がんで救急搬送されたまま急逝。残ったのは大量の荷物であふれかえるボロ家でした。
父は、『家を売ろう』と、共有相続した長兄に提案しますが、『思い出の家だから嫌』と断固拒否され、さらに、そのまま放置されました」
そうして時が止まったまま15年が過ぎ、「売りたくない」長兄の伯父は85歳、「売りたい」父も75歳。嫁いびりにあい、よい思い出のない家を「相続したくない、けど何もしたくない」という母73歳と、親族がみな高齢化していった。
「コロナ禍でしたので、高齢の伯父も両親もいつ亡くなるかわからない、といよいよ焦りました。もし父が死んだら、母が相続しなきゃいけない。その次は私に回ってくる。何より、このボロ家を母が相続するのが気の毒だと思いました。どっちみち苦労するなら、元気に動ける今、動こう。母のための親孝行だと思い、私が実家じまいしようと決意しました」