「帰省土産のお菓子、よろしくね」その一言も「オカハラ」(お菓子ハラスメント)になるかもしれない……(写真:つむぎ/PIXTA) 画像を見る

「創業57年の歴史をもつ、小樽を拠点にしたオルゴール堂。同社の30代男性社員が、“父性(パタニティ)に対するハラスメント”があったとして、680万円の損害賠償を求める裁判を起こしました」(全国紙記者)

 

この男性は育児のための勤務制限を申し出たところ、降格処分、始末書を提出させられたうえ『育児したいなら退職しろ』と暴言を浴びせられたというーー。

 

ハラスメント問題は深刻化しており、今年4月に公表された厚生労働省「ハラスメントに関する施策及び現状」によると、企業における発生状況はパワハラが48.2%、セクハラが29.8%、顧客からの迷惑行為であるカスハラが19.5%、妊娠・出産・育児休業にまつわるハラスメントが5.2%だった。

 

ハラスメント行為の第三者相談機関である、日本ハラスメント協会代表理事の村嵜要さんが語る。

 

「当協会でも、圧倒的に相談が多いのがパワハラで、セクハラ、マタハラが続きます。近年はさまざまなハラスメントが派生し、細分化してきています。細かすぎるものもあり、やや“ネタ化”しているところもありますが、当協会で認定しているハラスメントは41種類にのぼります」

 

こうしたハラスメントは、パート先などの職場ばかりでなく、家庭内や年末年始の親族の集まり、友人同士の間でも起こりうることだという。“あなた、それは○○ハラですよ!”と加害者認定されないよう、読者世代で起こりうるハラスメントを厳選してみた。

 

【家庭内・親戚・友達付き合い】

 

夫婦間の口げんかで起こりうるのが、正論で相手を追い詰めるロジハラ(ロジカルハラスメント)。

 

「とても早口でまくしたてる、会話をしても『結論から言ってくれ』『根拠は?』など問い詰めて、自由に話をさせない行為も該当します」(村嵜さん、以下同)

 

趣味の否定も要注意だ。

 

「コレクターの夫が集めるフィギュアも、価値がわからない妻から見ればガラクタ同然。でも、つい口走る『お金を使う意味あるの』という言葉は、個性の否定につながるパーハラ(パーソナルハラスメント)にもなりえます。

 

さらに髪形や服装を『似合っていないね』と繰り返し否定することも嫌悪感を抱かせてしまいます。褒め言葉のつもりで『痩せたね』と発しても、“今まで太っていたということ?”と捉えられる場合もあるので、容姿に対する発言は慎重にしなければなりません」

 

エンハラ(エンジョイハラスメント)は、子供が就職する50代の親がやりがちだ。

 

「つい励ますつもりで『仕事は積極的に笑顔でやるもの』『楽しんでやってこそ成果が出る』と言いたくなるものですが、仕事を楽しむことを強要することは苦痛を与えかねません」

 

親族の集まりでは、お酒を強要するアルハラ(アルコールハラスメント)が起こりやすい。

 

「コミュニケーションとしてお酒をすすめることは悪くありませんが、一度断られたのに『明日の予定あるの? ないなら飲めるでしょ』としつこく押すのはNGです」

 

年末年始、親戚同士の会話のネタが尽きると甥っ子、姪っ子にこんな質問をしがち。「彼女、彼氏いるの?」と恋愛事情をしつこく聞いてしまうと、ラブハラ(ラブハラスメント)、未婚者に必要以上に結婚をすすめるのはマリハラ(マリッジハラスメント)、子供がいない夫婦に「子供は作らないの」と聞いてみたりするのは、ニンハラ(妊活ハラスメント)だ。

 

「孫が欲しいからといって『2人目は?』など、夫婦の事情を考えずに次の妊娠を促すのはフタハラ(2人目ハラスメント)になる可能性があります」

 

親しい友人であっても、相手が不快に思えばハラスメント行為。“教えたがり”の人はグルハラ(グルメハラスメント)に要注意。

 

「特に珍しい料理を囲む場や、自分がお店を選んだ場合は、こだわりの食べ方を教えたくなります。焼き肉や鍋料理は、一つの網や鍋を価値観の違う複数人で囲むため、グルハラが起こりやすい環境ともいえます」

 

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