遺品整理を業者に任せるのは便利だが、比較的新しい市場ゆえにさまざまな落とし穴が……(写真:アオサン/PIXTA) 画像を見る

「遺品整理業者はここ数年で急激に増えました。それに伴い、残念ながら評判のよくない悪徳業者も増えています」

 

そう話すのは日本遺品整理協会の顧問で『人生最後の片づけ・整理を始める本』(メディアパル)の著者、上東丙唆祥さん。超高齢社会の進行に伴い、遺品整理業者の数は6年で約5倍に急増。事業者数は1万を超えている。

 

身近でも「実家の片づけは自分たちでは無理。業者に依頼した」という話を最近よく耳にする。なかには「思ったよりも高くついた」など、ため息交じりの報告も多い。

 

国民生活センターによると、2013年には73件だった遺品整理に関する相談は、2023年には209件。ここ10年で3倍に増えているという。

 

上東さんに、典型的なトラブル事例をいくつか教えてもらおう。

 

■ケース(1)急いで契約したが作業が始まらない

 

「よくあるのは見積もりの際、契約をせかされるケースです」(上東さん、以下同)

 

60代のA子さんは、業者から「今日契約を決めてくれたら値引きする」「早く決めたら早く始められる」などと言われ、見積もりの際にその場で契約。だが、作業はなかなか始まらない。連絡しても「日程は未定」と言うばかり……。こうしたトラブルは後を絶たないという。

 

「契約をせかす時点で、良心的な業者とはいえません。ほかの業者と相見積もりをとるのは当たり前ですし、近親者を亡くした後、すぐに決断できない依頼人もいます」

 

■ケース(2)廃棄物処理費が4倍に。しかも荷物も残ったままで……

 

また、見積もりより高額を請求される事例も多い。

 

母を亡くした60代のB子さんは遺品整理業者をネット検索し、相見積もりをとった。最終的に決めた業者の見積額は14万1千円。人件費(4人分)が7万6千円、2トントラック1台で2万5千円、トラック1台分の廃棄物処理代が4万円と内訳が明確で、他社より安いことが決め手だったという。

 

しかし、当日作業に立ち会ったB子さんに、業者は「廃棄物処理費用は先払いが必要」と言い、トラックが満杯になると4万円を請求。しかも、見積もりではトラック1台分のはずが、実際の荷物は4台分以上あり、トラックは廃棄物処理場へ4往復した。その都度4万円を請求され、合計16万円払ったという。

 

B子さんは「時間内に作業は終わらず、荷物はまだ残ったまま。なのに請求額は合計32万円にまで膨らみ、見積もりより高額だ」と憤まんやるかたない。

 

「“トラック1台分いくら”と見積もりを出す業者は避けたほうが無難です。積み込む量などいくらでもカサマシできますから」

 

たとえばトラックにタンスなど大型の家具を寝かして置き、その上に荷物を積めば、あっという間にトラック1台が埋まる。逆に、タンスなどを壊して小さくしてから積むこともできる。よくも悪くも、トラックの積載量は業者の手にゆだねられているのだ。

 

「見積額は、荷物の量や部屋の広さで判断します。私は整理する家を見て、このリビングならいくら、キッチンはいくらとそれぞれの見積額を積み上げてお伝えします。

 

経験豊かな業者はこれらを見誤ることはなく、見積もり以上に高額請求することはありません」

 

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