「0110詐欺」はこの1年間で370倍と激増している 画像を見る

「こちら、新宿警察署です」

 

警察をかたる新手の特殊詐欺が激増している。しかもスマホの着信画面には、実在する警察署の電話番号や、警察署がよく使う末尾が「0110」の電話番号が表示されるというから厄介だ。

 

末尾0110番からの詐欺電話は、2024年1月の5件から4月は38件、8月は294件と増え、2025年1月は1千件を突破。さらに2月は2千239件と、1年間で370倍超の増加だ。

 

「これは『スプーフィング』という機能を悪用した手口です」

 

そう指摘するのはITジャーナリストで成蹊大学客員教授の高橋暁子さん。スプーフィングとは050から始まるIP電話で使われるもので、元々はコールセンターなどから掛けた電話の発信者番号を、その会社の代表番号などに変えるもの。インターネット回線を利用する電話ならではの機能に詐欺師が目を付けたのだという。

 

スプーフィングなどで警察官をかたる詐欺被害は、2025年1~2月だけで1千39件確認され、被害総額はわずか2カ月で106億2千万円にのぼる。実際の詐欺の手口を見てみよう。

 

2025年3月、A子さん(50代)のスマホに「+」から始まり末尾が0110番から着信があった。出ると、宮崎県警の警察官を名乗る男が「あなたのキャッシュカードが犯罪に利用されている」と言う。驚くA子さんに詐欺師は「これからオンラインで取り調べを行う」と畳みかけ、LINEに誘導。「金融調査のため資金を確認する必要がある」と偽り、「言うとおりに操作するように。勝手なことをしたらあなたを逮捕しなければならない」などと脅して、A子さんに2回、合計で180万円を詐欺師の口座に振り込ませた。

 

「+から始まる番号は国際通話で、詐欺電話の可能性が高いです。着信があっても出ずに、無視してください」(高橋さん、以下同)

 

しかし2025年からは+がつかない、本当の警察署などの電話番号を表示するケースが増えている。

 

「詐欺が発覚しづらいように、詐欺アプリが進化したのでしょう」

 

同じく3月、B美さん(30代)のスマホに、愛知県警察本部の代表電話番号から着信。警察官を名乗る女は「B美さんが資金洗浄事件の容疑者になっている」などと説明した。その後、LINEのビデオ通話で、顔写真付きの警察手帳や逮捕状らしき書類を見せられたB美さんは、自分の無実を証明するには現金250万円を振り込むしかないと思い込まされたという。

 

冷静に考えると、怪しい点が多い。そもそも警察官が捜査にLINEなどを使うのだろうか。

 

「LINEの利用も、オンラインでの事情聴取も、警察が『お金を送れ』と言うこともありえません。

 

ただ一般の人は警察と接する機会が少ないものです。最初は怪しいと思っても、警察手帳や逮捕状らしき書類を見せられるうちに『そういうものなんだろう』と信じてしまうのでしょう。

 

そのうえ捜査対象だ、逮捕する可能性があるなどと脅されるとパニックになり、なんとか無実を証明せねばと焦って、お金を振り込んでしまうのだと思います」

 

次ページ >警察を名乗る電話でも折り返しが原則

【関連画像】

関連カテゴリー: