【事例3】遺言が不公平だ!
父、母、姉、弟、4人家族の父が他界。遺産の分け方を3人で話し合うことに。弟は「親父の遺産はぜんぶおふくろが相続すればいい。姉貴それでいいだろ?」と。姉も承諾し、遺産分割協議書を作らず、父名義の不動産の名義変更もせず放置していた。
しかしその後、母は「全財産を長男に相続させる」という遺言書を残して他界。姉、弟で相続の確認となる。
弟「親父が死んだとき、遺産はぜんぶ、おふくろが相続した。おふくろの遺言には、全財産を俺に相続させると書いてあるから、全額俺がもらえるはずだ」
姉「父さんの遺産を誰が相続するかは決めてなかった。父さん名義の不動産はそのままだし。遺産の分け方はこれからあなたと私で決めるのよ!」
《橘解説》遺産分割協議書
「父の不動産を母に、というのは口約束で、母の全財産は長男にというのは、遺言書に書かれている。この場合、遺言書の内容は有効と思われますが、父の不動産は、母が相続したという遺産分割協議の存在を立証するのは困難でしょう。
裁判になれば、父の不動産に関しては、姉の意見が有利になるでしょうね。法定相続分となれば、姉弟で2分の1ずつ不動産を分けることになりそうです。
遺産の話し合いがまとまった段階で遺産分割協議書を作れば、こういった口約束の言った、言わないは避けられます」
【事例4】認知症の母の遺言書
長女のA子は、母が亡くなった際に遺言書の内容をみて愕然とした。「全財産は長男のB男に相続する」と書かれていたのだ。「母は認知症でした。この遺言書は認知症と診断された後に書かれたから、無効です!」。しかし認知症の診断書などはなかった……。
《橘解説》認知症と遺言書
「被相続人が認知症の場合、『無理やり書かされたものだから無効だ』と訴えるケースは多いです。認知症の有無は、医師の診断書のほか、介護施設の介護記録、介護していた家族の証言など、総合的に判断されますが、証拠もなく『母は認知症だったに違いない!』と主張しても、基本的には通りません」
