《遺産相続トンデモ事件簿》生前贈与が遺産に、遺言が不公平…お金持ち“じゃない”家でも起こりうる相続トラブル事例7つ
画像を見る いま現在、家族の仲がよくても決して油断できない(写真:polkadot/PIXTA)

 

■たった14文字の遺言書で相続が可能になる!

 

【事例5】親の預金を兄が横領?

 

介護が必要な親と暮らす長男のA彦が、親の食費や医療費、介護などに必要な費用の支払いのため、親の通帳から現金を引き出して使っていた。

 

そんななか親が他界し、次男のB雄と遺産を分ける話し合いに。そこで「生活費や医療費にしては引き出し額が多すぎる! ネコババして現金を隠してないか?」となんと横領を疑われた!

 

《橘解説》帳簿の作成

 

「引き出した現金の使い道を明確にするのは、領収書をすべて保管しない限り困難です。ただ私の経験上、年間1千万円ほども引き出している場合は不自然といえます。

 

水道光熱費などは引き落としにしていれば現金は不要。医療費は、医療費控除の明細で把握できます。現金が必要なのは、食費や旅行費くらいです。

 

A彦の立場の“潔白の証明”には簡単な帳簿を作成することです。

 

『(1)現金でいつ、いくら引き出したか、(2)それを何に使ったか』をノートに書き、レシートを貼っておくことで、横領していない立証に十分な効果を発揮します」

 

【事例6】母親の遺産が貰えない

 

A人の父は、母と離婚後、B子と再婚。B子は父との間にC男を産んでいた。父が他界し遺産1千万円が残ったため、法定相続分で配偶者のB子は500万円、A人と異母兄弟のC男は各250万円を相続した。

 

その後B子が他界したが、A人の受け取るB子の遺産金額は0円だった。

 

《橘解説》後妻との養子縁組

 

「後妻が相続した財産は、後妻が他界したとき、前妻の子には基本的に相続されません。後妻の子だけが相続人になります。後妻に子がいなければ、後妻の兄弟姉妹が相続します。

 

もし再婚のとき後妻とA人が養子縁組していれば、いずれ後妻が亡くなっても法定相続分を受け取れますが、実際は養子縁組しないケースが多いです」

 

【事例7】夫のきょうだいとの分割

 

A彦とB美のあいだに子はなく、A彦には弟のC男がいる。先祖代々守ってきた土地を相続しているA彦が亡くなり、妻・B美と義理の弟C男で遺産分割の話になった。C男は「この土地は一族で守ってきたものだから、俺に相続させてほしい」と主張。

 

しかしB美は、「この土地は私の生活に欠かせないものなので、私に相続させてもらえませんか」と平行線に。

 

《橘解説》相続と配偶者居住権

 

「このまま話が進まなければ、法定相続分で配偶者が4分の3、兄弟姉妹は4分の1という相続になるでしょう。自宅と金融資産の配分を話し合う必要がありますが、自宅は遺産分割協議が成立するまで妻のB美が住む権利があります(配偶者居住権)。

 

妻がすべて相続するためには、夫が生前『妻にすべての遺産を相続させる』という、たった14文字の遺言書を作っておけばいいのです。兄弟姉妹には遺留分がないからです」

 

7つの事例について解説してくれた橘先生は「いま現在、家族の仲がいいとしても、油断しないでください」と話す。相続トラブルを「いつか来るもの」と捉え、7つの解説を読んで備えよう。

 

【遺産相続の基本ルール】

▼遺産の分け方は2種類あり、遺言によるものと、法定相続がある
▼法定相続分で遺産を必ず相続できるのは配偶者で、

 

(1)子どもがいる場合、配偶者が2分の1、子どもが2分の1を人数で分ける。
(2)子どもがいない場合、配偶者が3分の2、被相続人の親(直系尊属)が3分の1となる。
(3)子どもや直系尊属がいない場合、配偶者が4分の3で、兄弟姉妹が4分の1を受け取る

 

▼遺言書の内容に対して不服がある場合は「遺留分」制度があり、原則として法定相続の2分の1が遺留分となる(被相続人の兄弟姉妹には遺留分はない)

 

画像ページ >【写真あり】「妻にすべての遺産を相続させる」の14文字の遺言が重要(他2枚)

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