温泉や銭湯で“レジオネラ菌による肺炎”が急増中…「危ない施設を見分けるチェックリスト」
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■短時間で症状が悪化し呼吸困難、意識障害も

 

高齢者の場合、加齢による免疫力・呼吸機能の低下で、少量の菌でも肺炎を起こしやすく、呼吸不全へ進行する危険があるという。

 

「基礎疾患がある場合はさらにリスクが高まります。免疫力、呼吸や循環の機能、代謝や解毒の力が低下します。これらが重なると、短期間で症状が悪化し、多臓器不全に至ることもあります。高齢者や基礎疾患のある方にとってレジオネラ感染は命に関わる重大なリスクとなります」

 

実際に、2022年には鹿児島県の温浴施設で大浴場からレジオネラ属菌が検出され、利用客の男性が肺炎を発症。さらに神戸市の温浴施設では、70代の男性2人が感染し肺炎を発症。そのうち1人が亡くなっている。

 

「一般的な風邪や肺炎とレジオネラ肺炎は症状が似ていますが、38度以上の高熱が急に出るのが特徴です。咳や呼吸の苦しさに加え、だるさや頭痛、意識障害、下痢や腹部症状を伴うこともあります。温浴施設を利用した数日以内にこうした症状が出た場合は、早めに医療機関を受診してください」

 

受診をする際は、温浴施設名と利用した設備(大浴場やジャクジーなど)、利用日を伝えることが重要だ。医師が「レジオネラ肺炎」の可能性を早く疑い、適切な検査や治療につなげやすくなる。

 

■「床がヌメヌメしていないか」「浴槽の水が濁っていないか」

 

とはいえ、温浴施設を日々の楽しみとして通っている人も多い。温浴施設を利用する際に気をつけるべきポイントは、チェックリスト1で確認してほしい。

 

「床がヌメヌメしていないか」、「浴槽の水が濁っていないか」などは施設の衛生管理を確認するうえで重要だ。さらに、清掃や点検の有無や水質検査の結果、レジオネラ対策や衛生管理に関する案内がされているなど、施設が利用客に衛生管理体制を提示しているかどうかも細かくチェックしよう。

 

「免疫力が低下している時期は、レジオネラ属菌を含めた感染症にかかりやすく、重症化もしやすくなります。そのため風邪をひいているときや疲労がたまっているとき、睡眠不足が続いている、治療で免疫を抑える薬を使っているなどの場合は、温泉や入浴施設の利用を控えることをおすすめします。

 

どうしても利用する場合は長時間の入浴を避け、清掃や衛生管理がきちんとされている施設を選ぶことが重要です」

 

さらに、橋本先生によれば、レジオネラ属菌は家庭のお風呂でも発生するという。

 

■お家のお風呂では追い焚き機能に注意!

 

それを裏付ける報告もある。過去に長野県が実施した116の温泉、197の公衆浴場、38の24時間家庭浴場(お湯の浄化、循環、保温ができる家庭用装置)から入浴水サンプルを採取したところ、検査された3千314の浴水サンプルのうち123でレジオネラ属菌が観察された。公衆浴場や温泉からのサンプルからは3%だったのに対し、24時間家庭浴場のサンプルでは実に61%からレジオネラ属菌が見つかったという。

 

「浴槽に水を張ったままにしておくと、皮脂や汚れを栄養にしてレジオネラ菌などの細菌が繁殖しやすくなります。翌日まで水を残すのは避け、できるだけ毎日お湯を入れ替えて浴槽を洗ってください」

 

日々の浴槽の掃除はもちろん、お湯を長く張ったままにせず翌日には捨てる。追いだき機能を使うときは、定期的に専用の洗浄剤で配管を掃除する必要がある。

 

温かいお風呂が恋しくなる季節。利用する施設を見極め、家庭でも清潔を心がけ、入浴を楽しもう。

 

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