会社員や公務員に扶養される配偶者は年金制度上「第3号被保険者(以下、第3号)」とされ、年金保険料を払わなくても老後に基礎年金を受け取れます。この制度は専業主婦の利用が多いことから“主婦年金”などと揶揄され、廃止が取り沙汰されることも。
ですが、興味深い統計データが出てきました。
第3号の総数は1995年度の約1千220万人がピーク。うち女性は約1千216万人でした。その後、共働き世帯の増加などにより大幅に減少して、2024年度の第3号女性は約628万人と、約30年間でほぼ半減しています。
いっぽう、男性の“専業主夫”が第3号になるケースもあります。これが実は、1995年度の約4万人から2024年度には約13万人と、3倍以上に増えているのです。
第3号女性の減少は、女性の社会進出と育児環境の整備で、フルタイムで働く女性が増えたからでしょう。2026年10月には“106万円の壁”といわれた収入や勤め先の従業員数の条件が撤廃されます(ただし、従業員数には10年の経過措置あり)。今後は週20時間以上働く人の全員加入へと進み、さらに第3号女性は減るでしょう。
では、男性はなぜ増えているのでしょう。
■第3号被保険者制度はセーフティネット
会社員などがけがや病気で会社を休んだときに受け取れる「傷病手当金」の支給額が増えているというデータがあります。2023年度は約6千100億円で、5年前の1.6倍、10年前の2倍です。
そして、支給原因の第1位はメンタルヘルスの不調です(協会けんぽ)。特に中高年は発症を機に退職する人が多いという報告も。
うつなどを発症し療養のために退職した男性が、妻の扶養に入り第3号になるケースがあるのでしょう。また、次を決めずに転職に踏み切り、求職期間中に妻の扶養に入ることも考えられます。こうした場合に保険料負担のない第3号を選べることで、安心して退職できるのではないでしょうか。
よく「第3号は保険料も払わずにタダ乗りだ」などと言う人がいますが、これは間違いです。第3号の保険料は、保険組合全体で負担しています。当然、加入する配偶者も負担しているのです。
もちろん働けるときはしっかり働き、社会保険に加入して自分で保険料を払うと、老後にもらえる年金が増えます。傷病手当金や障害年金、遺族年金の対象になるなどのメリットもあります。
ただ働きたくても働けないときもあるでしょう。先のメンタルヘルスを損ない退職した人もそうですし、育児や介護などで働く時間がとれないこともあります。第3号被保険者制度はそのためのセーフティネットなのです。
私は第3号被保険者制度を決して廃止してはいけないと思っています。男性も女性も働けないときは配偶者の扶養に入り第3号となって、安心して休める社会であってほしいです。
【PROFILE】
おぎわらひろこ
家計に優しく寄り添う経済ジャーナリスト。著書に『65歳からは、お金の心配をやめなさい』(PHP新書)、鎌田實氏との共著『お金が貯まる健康習慣』(主婦の友社)など多数
